「指導の個別化」と「学習の個性化」も往還する
令和の日本型学校教育として示された「個別最適な学び」は、もともとは、「個に応じた指導」と呼ばれている概念でした。
「個に応じた指導」は、「指導」なので教師視点でしたが、29年版学習指導要領は一貫して子供が自己調整しながら自分の学びを進めて行くことを重要視するという子供視点に立っているので、それに合わせて「学び」を使って「個別最適な学び」とされました。
「個別最適な学び」は、従前のとおり「指導の個別化」と「学習の個性化」に整理されます。
「指導の個別化」は、個々の子供に応じていろいろな方法で学びを進められるようにするための教師の支援の工夫と言えます。個々の学習状況を詳しく捉えたり、学習ログや子供本人の性格などを見極めたりしたうえで学習方法等を提案して一人一人の子供に合った多様な方法で学べるようにしていきます。
多様な学びの方法については、子供の「新たな情報」として知識になっていきます。具体的には単元の、或いは内容のまとまりごとの導入部分において、教師は、子供たちに多様な学びの方法があることを提示します。
このときは、まだ、一斉指導的な提示の仕方になることもあります。教師が子供一人一人の学習状況等を十分に把握できていない場合などがこのケースで、その時点ではまだ「指導の個別化」が成立しないからです。
しかし、子供たちは、「新たな情報」としての知識を活用して自己の学習課題に合ったものを選んで学びを進めて行こうとします。ここから、「学習の個性化」がスタートすることになります。このときはじめて「指導の個別化」と往還する状況となってきます。
つまり、「学習の個性化」は、学びを子供が自ら進めて行くうえでの材料となる「指導の個別化」が前提となります。教師が「指導の個別化」として、子供一人一人が学習課題を見出したり課題解決に取り組んだりできるような方法や機会を提供することで、子供自身が自らの学びを最適になるように自己調整していく「学習の個性化」が成立するからです。