子供の自己決定、6つのレベルを比較する

マネジメント・直接的指導,子供の学び学習課題,指導者,支援

主体的な学びを進められるように子供が自己決定できるレベルは、どの程度まで保障すべきでしょうか。学年や運動内容、また、資質・能力がどのくらい身に付いているかによって違いがあるでしょうが、「多様な動きをつくる運動」を例に授業スタイルを考えてみましょう。

「子供が好きな時に好きな活動を決めて好きなように行う」という授業は、どうでしょうか。これでは、遊んでいるときとまったく同じようになる可能性もあります。極端に考えると、45分間の中で「『多様の動きをつくる運動』で扱う内容なら何をやってもいい」ということになります。

「ぼくは、〇〇くんたちと5人で一緒に相撲大会のリーグ戦をやりながら、力の入れ方のコツを共同で研究します。」「私は、最初、一輪車をやって、次にジャングルジムに行って、最後にフープです。」と、一人一人がバラバラな運動に取り組むことができます。自己の学習課題を見いだした子供が自ら学びを進められる状況にあるとしたら、OKでしょうか、ありえないでしょうか?

「指導者が時間を決め、子供が好きな活動を決めて好きなように行う」は、どうでしょう。45分のうち、最初に自分のめあてを確認する時間、今は楽しんで運動するエンジョイタイムの時間、次に新しい動きに挑戦するチャレンジタイムの時間、そして、友達と教え合うなかよしタイム、授業の最後は振り返りの時間など、おおまかに時間設定を指導者が決めておくケースです。

これなら、「私は、〇〇くんと短なわをやっていて、私は気付いたことがあったから忘れないうちに学習ノートを書くけれど、〇〇くんはまだ納得できないので練習するそうです。」などとは子供も言ってきません。①と違って時間の使い方が決められているので、ノートの時間には全員が一緒にノートに書く時間となり、運動に取り組む時間も全員が必ずやることになっているからです。子供が好きな活動を選べる部分は①と同じです。ありそうな感じの授業? どうでしょうか?

「指導者が活動をいくつか決め、子供が好きな活動を選択し(決め)、好きな時にやりたい活動の仕方を決める」なら、どうでしょう。45分間の時間の内訳は②のように設定されていませんが、取り組む運動にある程度の制限がかけられています。「今日は、フープ、短なわ、長なわ、ボールのどれを使ってもいいですよ。」という授業です。子供は、用具を操作する運動に取り組むことを決められていて、これらの中から好きな用具を選択できます。

しかし、時間の使い方は自分の思い通りなので「私はまず、学習ノートを見て自分の課題を確認しながら、〇〇さんと一緒に短なわのチャレンジタイムにします。できるようになったら、短なわは終わりにして振り返りをしてから、後半、フープを跳ぶエンジョイタイムにします。」「ぼくは今日はずっとエンジョイタイムにして、〇〇くんとキャッチボールを楽しみます。」という具合です。どんな学びになるでしょうか?

「指導者が時間と活動を1つ決め、子供がやりたい活動の仕方を選択する(決める)」ということは、どうでしょうか。「今日の体育は、フープです。どんな遊び方がありますか?」という授業です。活動は、1つに絞られていて、それを深めていこうという意図があるように思える授業です。子供たちがフープを回す、転がす、跳ぶなどのいろいろな行い方を決めて学習します。

45分の割り振りは、前半がエンジョイタイムで後半がチャレンジタイムに決められています。「まず、腰や手で回すことをたっぷりエンジョイタイムで楽しみたいな。そのあとで、小さいフープでもできるかどうか、チャレンジするんだ。」と自己の学習課題を見いだす子供もいるかもしれません。しかし、「腰で楽に回すコツが分かってきたような気がするから、もうちょっとエンジョイタイムを続けたいな。」ということは認められません。そのため、「チャレンジタイムだけど、エンジョイにしちゃえ。」という子供も出てくるかも…。

「指導者が時間とが活動とその活動の仕方を決め、子供が好きな活動を選択する(決める)」ような授業は、どうなるでしょう。「授業の前半は、用具を使って、みんなで『回す』をしましょう。フープ、短なわ、長なわ、ボールなどいろいろな用具があるから、それぞれどうやって回したら楽しいか、考えましょう。後半は、違う用具に変えてやりましょう。」という感じです。

回す動きのポイント、課題解決の方法があらかじめ示され、「回す」という動きをテーマとして子供が活動を選んでいくような授業です。子供は、面白いと思って運動に取り組むでしょうか。それとも…。

「指導者が子供の活動をすべて決め、子供は指導者の指示どおりに運動する」という授業は、どうでしょうか。「今日はフープを腰で回します。」「先生がやるから、よく見ていなさい。」「分かりましたか?」「みんな、このサイズのフープでやりなさい。」「さあ、みんな、腰で回してみましょう。」「一度、集まりなさい。」「もう一回、先生のやるのをよく見なさい。」「じゃ、しっかりやんなさい。」「今日は、腰で回すんですよ。手で回してはダメです。」「なんで、できないの? よく見てないからでしょ!」

昭和40年以前によく見られた授業に似ています。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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