「膝を曲げない」ばた足では、ちっとも進まない
ばた足は、うまく使えば前に進んでいく泳ぎになるので、子供は大好きです。しかし、膝が曲がってバッチャンバッチャンやっているばた足が進みにくいことを知っている指導者は、ついつい、こう言ってしまいます。
「つま先までピンと伸ばして腿で蹴ります。膝を曲げないで!」
すると子供は、つま先をピンと伸ばし膝が曲がらないように力を入れて、股関節から足を1本の棒のようにしてばたつかせる動きをしようとします。水圧があるので膝は少し曲がってしまうのが当然でも、「膝が曲がっちゃダメ!」と言われるので子供は必死です。ばた足では股関節を動かさなくてはなりませんが、膝を曲げないようにするため腰を左右に振る無駄な動きもしなければならなくなり、キックの幅も大きくせざるを得ません。こうして、指導者の言うことをきちんと守ろうとする子供ほど、前に進まないばた足になっていく可能性があります。
3・4年生の「浮いて進む運動」に例示されているばた足は、プールの壁やビート板などにつかまって、動きの感じをつかめるようにしていきます。「膝を曲げない」という知識が技能の獲得のじゃまにならないようにしなければならないので、このとき「膝を曲げない」とは言わず「足首を伸ばすように」と指導しておきます。
1・2年生で、プールサイドに腰かけてばた足っぽいことをさせることがありますが、それによって進むことはないので、彼らにとっては、バチャバチャやっていることが楽しい「水遊び」に過ぎません。ばた足を扱う必要はありませんが、足のしなる感じ、足の甲や裏で水を捉える感じがつかめるよう、もぐったり浮いたりする「水遊び」を繰り返し学びます。ばた足やかえる足の動きと似た感じをつかめるようにするための動きの素地を「水遊び」をしながらつくっていくのです。