クラスの全員が同じコツをつかむことはない
ある運動がうまくできるようになったとき、「コツがつかめた」と言うことがあります。まだうまくできずに「あれ? 何だかわからないけどやったらできちゃった」のレベルでは、「コツがつかめた」とは言いません。偶然にもできてしまった運動が、いつでも自分の思うようにできたときに初めて「コツ」を実感し、「つかめた」と言えるのです。
「コツ」とは、漢字で書くならば「骨」であり、それは、体の中心とか要とかいう意味になります。自分がやりたいと思っているある運動を獲得する過程において「ここをこうするとできる」といったような一連の運動経過の中の大切な感覚を指します。それは、その運動行う場合において要となる体の動かし方を自分で分かることです。
絵図などによって技能ポイント示しても、それは、「こんな形の運動です」というように「動きの形」を示しただけに過ぎません。「絵図とポイントを掲示すれば、子供はそれを理解して技能も習得できるはず。」と考えがちですが、動きの習得はそれほど簡単なものではありません。それは、「どんな感じで動くとできるのか」という「コツ」までは絵図では表しきれていないからです。
「どのタイミングで体のどこにどんな感じに力を入れるとできそうな気がするようになるのか」は、「やってみる」ことを通して「ああ、こんな感じかあ~。」と初めて考えられるようになります。そこから、「じゃ次は、こんな感じでやってみたら、できそうな気がする」と自分の感覚で感じ取れるものなのです。主体的な学びの入り口です。子供は、ここから微調整を続けていきながら、次第に自分の「コツ」をつかんでいく学びへ入っていきます。
「コツ」は、きわめて感覚的なもので個人の主観的な感じ方によって違ってくるので、クラス全員が同じ「コツ」を共有して運動していることはありません。技能ポイントを言葉で伝えるのは簡単ですが、その運動の技能を「コツ」として個人がつかめるようにするには、ほかの人の「コツ」にも共感できるような「似たような感じの動き」を思い起こす学習が必要になります。