なぜ、赤ちゃんは、水中で目を開けていられるのか
首が据わった生後6~7ヶ月の赤ちゃんなら、教えてもらってもいないのにプールの中で泳ぐような動きができます。
そのとき、目はパッチリと見開いていて、ゴーグルなんか必要ありません。目は痛くないのか、息は苦しくないのかと思いますが、無駄な力も入らず水中の景色を楽しんでいるかのようです。
胎児は7ヶ月目ぐらいから瞬きを始めると言われており、また、羊水では呼吸ができないので気管を閉鎖する機能が備わっています。この機能が退化しないまま生まれてくる赤ちゃんにとっては、「懐かしい場所」なのでしょう。しかし、成長するにつれ目が異物を排除する機能が獲得され気管を閉じる機能も失われていくので、水中で目を開けたり潜ったりすることを指導しなければならなくなります。
水泳運動系の学習は、29年版の学習指導要領から「安全確保につながる運動」が新たに加わりました。これまでも着衣のまま水に落ちた場合の対処の仕方を学んでいましたが、生命にかかわるという理由で水中でも安全に運動して命を守れるよう指導する領域です。
1・2年生の水遊びの例示にある「水中でのジャンケン、にらめっこ、石拾い、輪くぐり」では、ゴーグル無しでも目を開けられるようになることを学習指導要領では求めていることになります。水中の視界の悪さはパニックを引き起こすので、万一の場合を考えると水中で目を開けたときのぼやけた風景を経験させておいたほうがいいという考えに基づくものです。
それは、人間が母親のおなかの中に忘れてきた記憶でもありますが、最近の子供たちは、動物としての本能が失われているのか、水に対して目が弱くなっているかもしれませんから、授業の中でゴーグルの扱いをどうするのか難しいところです。