子どもに「必要な失敗」を省略する授業では、運動発達が阻害される
1・2年生は、相対的に頭部と躯幹が大きくて重心が高い位置にあるという、立って運動するには都合が悪い形態的な特徴をもっています。そうでありながらも動きを獲得していかなければならないので、その過程は並大抵ではない努力の連続です。毎日の動きが、毎回の動きが、未経験の感覚を味わっているからです。
動きができたという経験が無いうちは、「必要な失敗」を繰り返すことになります。しかし、大人が見て「失敗」と感じても、本人は「失敗」とは思っておらず「ちょっとうまくいかなかった。」だけですが、その「ちょっとうまくいかなかった。」ことこそが、動きの獲得に必要なのです。それをここでは「必要な失敗」と呼ぶことにしています。
「必要な失敗」では、この過程で神経~筋の協調が次第に発達し、感覚統合がなされて新しい動きを獲得できます。そのため、ここで「必要な失敗」が省略されたり経験できなかったりすると、子供の運動発達を阻害することになります。さらに、呼吸器系・循環器系、筋力等の機能が未熟で運動のデキを左右するほど発達していないため、運動成就の優劣は、酸素負債によらずもっぱら調整能力に大きく依存します。
1・2年生の指導は、ある種の運動や動きに偏ることなく様々な運動遊びを幅広く経験させながら調整能力を伸ばすことで動きを身に付けられるようにします。なわ跳びだけを毎時間繰り返す体力UPのためのような運動は、この時期の子供にとって必要ありません。
学習指導要領では、1・2年生から「体つくりの運動遊び」を示されていますが、そこでは様々な運動遊びをいかに経験させて動きづくりをしていくかが学習の中心となります。つまり、なわ跳び遊びは、そのほんの一部にしか過ぎません。1・2年生の動きの獲得は、様々な運動遊びでの「必要な失敗」を繰り返し、積み重ねる中で育っていくとの認識が、指導者には求められます。