今の時代、「へた」と言っては、いけません

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「へた」は、子供に絶対に言ってはならない言葉です。もし、言ってしまったら、言葉による暴力行為と判断されます。きわめて、不適切な指導です。

現実には、字がへた、料理がへたなど運動に限らず「へた」だなと感じる状況は、存在します。しかし、分かりにくいのが、どこまでが「へた」で、どこからが「うまい」のか、その評価基準です。

例えばフィギアスケートでは、技の難易度とその得点が決められており、トリプルアクセルをすべきところ回転が不足していたり転倒したりしたら減点し、明確に数値化していきます。しかし、「うまい」「へた」は、一つのジャンプができたかどうかだけで決まるのではなく、身のこなしや振り付けの構成、曲の解釈などの評価規準によって総合的に決められます。そのため、転倒しても大会で優勝する場合があります。転倒したのだから「へた」なはずなのに、優勝したので「へた」ではないとも言えます。

昭和33年版学習指導要領には、3年生の「ボール運動」(当時、この領域名でした。)に「へたな者も仲間はずれにしないで…」、4年生に「へたなことや失敗を許しあい…」と表記されていました。なんと、びっくりです。この「へた」への配慮の表記は、昭和52年版に「ゲーム」に改称されるまで約20年もの間、続きます。

集団対集団で競い合うボール運動領域(当時)だけに示されていた「へた」は、「○○がへただから負けたんだ!」と人のせいにししまうことがあるからです。ボール運動(当時)の運動の特性である「勝敗を競い合うこと」があるからこそ、示されていたのでしょうが、「へたな友達とも、仲良くしましょう」とは、きわめて道徳的です。

なお、平成20年版までは3・4年生のゲーム領域だけに「勝敗を受け入れる」趣旨が示されていましたが、平成29年版からは、5・6年生のボール運動領域にも示されるようになりました。ギャング・エイジと呼ばれ自己中心性が残っている3・4年生から、多少、自己統制ができると期待されている5・6年生にも波及した形です。子供のコミュニケーション能力の発達の遅れが考慮された結果と思われます。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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