合理的配慮をしなければならない
全米プロゴルファーのケーシー・マーティン(Casey Martin)は、右足に先天性の障害があるため、競技中にカートを使用させてほしいと願い出ました。障害によって歩くときの苦痛や骨折のリスクがあったからです。
足に障害があるという理由でプロになれないような差別はありませんでしたが、いざプロに転向してみると賞金を稼がないことにはマーティン自身の生計が成り立ちません。電動カートに乗れば打つたびに歩くことからは開放され、その分の体力も消耗しないので競技では有利になります。
マーティンの申し出に全米プロゴルフ協会は「プロは、競技で歩くのがルール」と拒否しました。そのため、結局、裁判で争われることになりました。争点は、「プロのゴルフ競技において合理的配慮が認められるべきか」でした。
この裁判で全米最高裁は、「カート使用を認めるべき」と合理的配慮が可能である旨の判決を出しました。ゴルフ場は公共施設であるので法の適用対象であるとした上で、「ゴルフの本質は歩くことでないので『歩く』に固執する理由はない。そもそも少ない打数で競い合うのがゴルフの本質であるから合理的配慮が可能である」という判決理由でした。
日本でも平成28年から「実施に伴う負担が加重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう…必要かつ合理的な配慮をしなければならない」という障害者差別解消法が施行されています。そのため、体育の学習でも、障害のある児童などについての指導の工夫や「運動が苦手な児童」「運動に意欲的でない児童」への配慮について、平成29年版の学習指導要領から示されるようになりました。