幼児教育から考える運動遊びの授業
幼児期の遊びは、遊んでいる中で何かを見付けたり、気付いたりしていく学びです。自己決定こそが遊びを見る視点となります。
幼児教育では特定の運動種目を経験するのではなく、身体を十分に動かして、進んで運動をしようとすることをねらいとしています。それは、幼児の自発的な活動としての遊びを通して、しなやかな心と体が育まれるという経験カリキュラムに基づいているからです。
つまり、マット運動のように、はじめから運動種目を明確にした学びではないのです。学問体系の獲得を重視する教科カリキュラムを中心に授業を展開している小学校の先生が幼児の遊びを見ても「ただ遊んでるだけじゃないか」と感じやすいのは、そのためですが、幼児は、遊びの中でおおいに学んでいるのです。
このような幼児教育における遊びの実態が理解されにくいことは、運動遊びの授業の課題となって表れてきます。マットを使っての運動遊びでは、マット運動の技を易しくしたような動きを獲得することを目指すのではなく、その場に行けば自然とその動きをしたくなるような環境を設定することで、ねらいとする動きを楽しみながら結果として経験できるような授業づくりとなります。
しかし、現実には、高学年の授業づくりの考え方を低学年の運動遊びに卸してくるようになってしまうことも少なくありません。巧技台を自由に組み合わせて遊んでいた幼児が、体育館に整然と並べられた無機質なマットの場で遊びたくなるはずがないのです。
1・2年生では、運動遊びの中に学びを作っていくという授業が求められます。そのため、遊びの要素を取り入れた体育学習となるよう、幼児教育で培われた子供の自己決定を引き出せるような学習環境を教師がいかに作れるかが重要となります。