「できない」原因を解明して、運動が苦手な児童への配慮を考える

学習内容器械運動系,嫌い,学習指導要領,技能,運動遊び

 「しゃがんだ姿勢から手で支えながら腰を上げ、体を丸めながら後頭部-背中-尻-足裏の順にマットに接して前方に回転して立ち上がること。」3・4年生のマット運動に例示された前転の行い方です。

平成29年版学習指導要領解説に例示された器械運動系では、発展技も含めてその種類が増えました。技が増えたのは、子供一人一人がその力に応じて、自分でできそうな技を選んで主体的に学習課題を解決していけるような学習にするためです。

決して、例示された技を全員に教えなくてはならないということでも、また、例示されたすべての技を習得させなくてはならないということでもありません。 技の例示が増えたからと言って、あっちにもこっちにも全ての技の紹介をするのは、「え~、あんな技もできなくちゃいけないのかな?」と思わせてしまうことにもなります。子供は、それらが「例示」と思っていないからです。

解説に新たに記載された「運動が苦手な児童への配慮例」には、「できない」原因を解明するためのヒントが隠されています。冒頭の前転が苦手な子供に配慮する例としては、「ゆりかごなどの体を揺らす運動遊びや、かえるの逆立ちなどの体を支える運動に取り組んだり、傾斜を利用して回転に勢いをつけて転がりやすくしたりする」ことになります。

しかし、この例は、1・2年生でのマット遊びで学習する内容のいわばダイジェスト版と言えす。ゆりかごで体の丸め方を体感し、かえるの逆立ちによって腕で支える感覚や腰を上げる感覚を、傾斜の場を使って回転の勢いを実感するのは、マット遊びの学習内容でもあります。

前転が「できない」要因は複合的に表出しますが、1・2年生のときに「しっかりした前転をできるようにしましょう。」と指導してしまうことによって本来、運動遊びで磨かれていく運動感覚が置き去りになってしまいます。3・4年生で学ぶような前転を指導してしまって、「運動遊び」を指導していないことに、この苦手な子供を生み出している原因があります。

適切な「運動遊び」によって「苦手」の多くは解消されていく可能性があります。器械運動系に限らず「5年生だから…」と言わずに「運動遊び」を授業の一部に取り上げることは、十分に意味があるのです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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