「知識の概念的な理解を実現する」とは?

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平成20年版学習指導要領では、その改訂に至る経緯の中で、「21世紀は、知識基盤社会である」ことを挙げていました。当時、教育基本法が約60年ぶりに改正されたことを受け、21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から改訂された学習指導要領でした。

当時、21世紀は新しい知識や情報・技術などが社会のあらゆるシーンでの活動の基盤として重要性を増していくものとされていました。なかでも、「知識」については、それを活用する能力に課題があると、そのころのPISA調査から明らかになっていた時期でもありました。

あれから10年もたたないうちに、平成29年版学習指導要領が出されることになりましたが、そこにはもう、「知識基盤社会」という言葉は、確認できません。いくら、インターネットの普及などをはじめとする社会構造が急速に変化したとは言え、このスピード感は、予測が困難な時代になったことの象徴のようです。

「知識」について平成29年版では、「知識の概念的な理解を実現」と表現されるようになっていました。そして「情報を再構築するなどして新たな価値につなげていく」とされています。

これまでの「知識」に対する考え方は、偏重主義的に感じられた時代もあってか、すべての基礎的・基本的事項であったため、役に立とうが立つまいが「知識」が身に付いていさえすれば、そこから創造力、思考力などの汎用性のある資質・能力が発揮できるものと考えられていました。形式陶冶の考え方です。「知識」として習得しそれが再生できれば、問題解決能力も身に付くという考えが、主流でした。多くのテストで「知識」を問う出題がされており、そのことをもって「確かな学力」を測っていました。

しかし、単なる記憶としての「知識」は、完全にAIにその座を奪われてしまう時代となりました。合わせて学力調査の結果では、「基本となるA問題はできても、応用となるB問題ができない」という結果が顕著になってきました。

そこで、平成29年版では「知識」が生きて働くものとなるよう、一定の文脈の中で再構成できる能力を求められるようになりました。そのことを「概念的な理解」と呼び、「知識の理解の質をさらに高める」ことで確かな学力を育成しようとしているのです。「知識基盤社会」というワードは消えましたが、せっかく習得した「知識」を活用できないような子供を生む授業しかできていなかった実態は、10年たっても変わらなかった、それゆえの29年版改訂と言えます。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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