身に付けた資質・能力が転移する授業の仕掛け
運動領域では、発達段階を考慮して学習指導に弾力性をもたせることができるよう、1・2年、3・4年、5・6年の2学年ごとのまとまりで内容を構成しています。
つまりこれらは、学習指導要領に記載されている目標や内容は、偶数学年の最終的な姿として捉えることになります。
そうなると、2学年のまとまりで考えることになるので、3年生のときに幅跳びで学んだことを4年生での高跳びでの学びに活用できるような授業改善の工夫を図ることが考えられます。子供たちが高跳びを学ぶ時、幅跳びと同じ原理、つまり、この2つの運動の特性が同じであることに子供が自分で気付いていけるような授業の仕掛けが、学びが転移するために実は必要なのです。
技能で考えてみると、「短い助走から踏み切り足を決める」ことがポイントであることを子供たちは3年生での幅跳びで身に付けてきていると考えられます。しかも、コツとしては、踏切前の最後の3歩が重要で「トン・トン・ト・ト・トン!」というリズムがいいということも分かっています。
このように、前方に踏み切るか、上方に踏み切るかの違いはありますが、「短い助走から踏み切り足を決める」という技能の内容は幅跳びでも高跳びでも同じ原理なのです。幅跳びと高跳びが走・跳の運動という同じ運動領域に含まれているのはそのためです。
同じように思考・判断の内容である課題解決の方法についても、ICT機器を活用したり、競争の仕方を工夫したりすることは、幅跳びの時の学び方を高跳びで活用することができるはずです。同じ運動領域ですから、学習指導要領の記載内容は、当然、同じです。
つまり子供たちには、幅跳びで身に付けた資質・能力を高跳びの学びで活用しやすいチャンスが高跳びにはあるのです。
ところが、指導者は、この2つの運動がいずれも同じ運動領域の内容であることが分かっていても、「幅跳びと高跳びでは単元が違うから」というような理由で、単元の1時間めから丁寧すぎるくらいに説明したり、いろいろな資料を提示したりしなくては、子供たちが学べないと考えてしまいます。それでは、子供が身に付けた学びが転移しやすい同じ運動領域でのせっかくのチャンスをつぶしているということになります。
幅跳びと高跳びという個々の単元ごとに授業改善するイメージを越えて、走・跳の運動という内容のまとまりで捉え直してみることで、深い学びの実現につながっていくのです。