豊かに動ける体を作るための課題意識
動き方を知らない子供たちが動きを身に付けられるようになることは、子供たちの豊かなスポーツライフの実現に欠かせません。
いずれ年齢を重ねて、かつての自分のパフォーマンスができなくなったとしても、体を動かすことに対してイヤな感じがしなければ、その年齢相応でできうる運動に親しむようになっていくものです。ゲートボールや近所の公園を散歩をする高齢者は、まさに、そうした考えから自身のスポーツライフをエンジョイしていると言えます。
今日の体育科では、いかに豊かに動けるからだを育成するかが重要であり、過去の体力づくり中心の過ちを繰り返さないようにしなければなりません。5・6年生の学習内容が「体力を高める運動」から「体の動きを高める運動」に変わったのも、そのためです。
「体力を高める運動」の時代には、体力の必要性や行い方を理解させない、特訓のような指導も見られ、運動する意欲が子供からどんどん奪われていきました。体力要素に基づいて自己を分析して伸ばしたいところや弱いところを見付け、その解決を図ることは、5・6年生でさえも実現が難しいことです。
それは、これまでの体育でトレーニングのようにある一つの動きを繰り返す学習をすれば、体力向上という大きな目標を達成できると考えて誤った指導を多くの教員がしていたからです。学校で行われる持久走大会などは、その典型的な例で、子供の個別最適な学びは、どこかに行ってしまっています。
部活動やプロスポーツのように明確な目的意識がなければ、よほどのインパクトが無い限り課題設定は厳しくなります。5・6年生では、動きが変わる、日常的に取り組みができる、発表する場を設定するなどが有効です。授業や日常の生活で取り組むことで、体の動きが高まり、その結果として体力の向上も見られたと意識できるようにします。