「ドリブルOK」は、誰のためのルールなのか
平成29年版学習指導要領解説のボール運動の例示にあるゴール型のボール操作の技能には、「パスを出す」「パスを受けてシュートする」のほか「相手に捕られない位置でドリブルする」があります。
これらは、例示なので、全員が必ずドリブルを習得しなくてもいいのですが、それでも、パスとシュートだけで進めてきた学習からルールを変えて、ドリブルもやってもいいことにする場合があります。
「ドリブルOK」は、ドリブルをする技能がある程度備わっている子供の場合だけ有利です。ボールを見ないで仲間や相手を見ながらドリブルできる子供は、ミニバスをやっていたり休み時間にバスケットボールでせっせと遊んだりしている子供だけです。
多くの子供は、相手が迫ってきたりじゃましてきたりしたときに切羽詰まってボールをパスする状況になるので、ゲーム全体が雑になってきます。それまでに学習してきたパスの精度が格段に落ちるからです。
そのため、このルールにしたときは、誰もがドリブルを楽しむことができるようにゲーム全体を考え直さなくてはなりません。そうでなければ、意味のない場所でのドリブルか、一部の子供だけが楽しんでいるドリブルになってしまうからです。
たとえば、「ドリブルをしているときには、ボールを奪ってはいけない。」「ドリブルでボールを運べる範囲は、〇〇まで。」など、ドリブルに関する補足的なルールにより、誰もがある程度はドリブルを楽しめる条件を整えておく必要があります。
ただ単に「今日からドリブルOKにします。」というルール改正だけでは、一人一人の学びが保証されることには、なりません。