断トツにけがが多い跳び箱運動の安全上の配慮

マネジメント・直接的指導,教師行動学習指導要領,安全,技能,跳び箱遊び・跳び箱運動

令和3年度、小学校の体育の授業中に起きた傷害件数約78,000件のうち、全体の20%を越える約16,500件を占めている運動が、跳び箱運動です。

ちなみに2番目にケガが多いのがゴール型で扱うバスケットボールですが、それでも跳び箱運動の半分にも満たない6,700件余り。小学校の跳び箱運動は、断トツに最もケガに留意する必要がある運動であると言えます。このことを踏まえて、いくつか留意すべき点を考えてみましょう。

1 動きや感覚を磨いておく

 マット運動で培われる回転感覚を磨いておくことや、馬跳びやうさぎ跳びのような切り返し系の技と似たような感じの動き(アナロゴン)を十分に指導しておくことです。準備運動に取り入れたり、主運動につながる動きとして1・2年生の例示にある支持で跳び乗り・跳び下りなどの跳び箱遊びを取り入れたりするといいでしょう。

2 安全な場づくりをする

 「落ちると痛いから、跳び箱は好きじゃない」という子供も少なくありません。落下の心配がある台上前転の場では、跳び箱の両側にマットを敷いたり、5・6年生であれば補助者を付ける場を設けたりするなど配慮が必要です。

3 切り返し系と回転系を扱う順序 個別最適な学びを保証するとなったとき、切り返し系と回転系の両方を自己の学習課題とする子供もいるでしょう。回転系は、着手の後に逆位を通過して回転する動きなので、この回転感覚が残ったイメージで切り返し系に挑戦すると、前につんのめってしまうようになります。特に1時間の中で両方の技に取り組むような場合には、切り返し系を先に行うよう、子供本人にも伝えておきます。

 また、跳び箱が低ければ条件的にやさしいし安全だろうということはありません。切り返し系で低すぎると踏み切り後に体が前に倒れるようになることを怖がる子供もいます。低い跳び箱での回転系は踏み切り後の回転はしやすくても回転後の着地が難しくなります。選んだ技や各自の技能に適した場を選べるようにしていきます。

子供から見て跳び箱運動は「跳べるとかっこいい」感じの運動ですから、その運動特性を味わえるよう安全に十分配慮した指導が求められます。

(傷害件数は、独立行政法人日本スポーツ振興センター「学校管理下の災害(令和4年版)」による)

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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