高いところに上りたがるのは、自己有能感がうれしいから
自分では全く動けない赤ちゃんは、だっこされて初めて「どうやら、高いところから見る世界には楽しいことが広がっているみたいだ」と認知します。有能な学び手である赤ちゃんはこれを自ら確かめたいと思っているのですが、誰かに抱っこしてもらわないことには新しい景色は見えてきません。
誰かがいれば、そのようなチャンスが訪れるのですが、しかし、いかんせんハイハイさえできないのが自分の体の現状なので、仕方なくゴロゴロしながらその時を待っています。「だっこほど高くされなくても、少し高い位置からであれば新しい景色はすぐ目の前に広がっているはずだ。」ということにも、おそらく気付いているでしょう。
ハイハイができるようになってくると状況は一変します。多くの場合は、床しか見えないのですが、目の前の景色が目まぐるしく変化していくことを大いに楽しみます。
ハイハイをしている赤ちゃんが常にニコニコしているのはそのためです。しかし、いかんせんハイハイだけでは、だっこされた時のような何とも言えない気持ちよさを味わえません。
よちよち歩きができるようになると、見える景色の変化は、ハイハイに比べようがないくらい面白いはずです。よちよち歩きに安定感がないところもミソで、それさえも面白くて、たいていはニコニコしながら歩きます。
しかし、たとえ泣いていたとしてもよちよち歩きができることから、「泣く」と「移動する」が分化し、同時にできるようになったと言えます。 デュアル・タスクが成立しているのです。
こうなってくると、ちょっとした段に乗ったときでさえ、今までとは違った景色が眼前に広がるため、高いところを克服していこうとする意識はますます盛り上がります。動けるようになにつれ、見えるものも聞こえるものも違ってくるので、今まで見たことのないものを見てみたいという気持ちがあるのでしょう。
高いところに登ろうとする子供は、自分の感覚に十分な刺激を与えて自分で発達させようとしているのかもしれません。大人からすると危なっかしい動きですが、経験してほしい動きの一つではあります。