行い方のポイントを示されても、動きの多様性は、発現しない
幼児期から1・2年生の時期に獲得される基本的な動きからレパートリーやバリエーションを展開させるにあたっては、動きの多様性をどう捉えるかが重要になります。
それは、「走る」「跳ぶ」「投げる」「打つ」など様々な基本的な動きについて、その行い方を工夫することです。空間的、時間的、力量的な調整を変化させ、行い方の多様な展開がされていくと捉えていくことです。
体の様々な部位の運動が様々に調整されることにより、基本的な動きの行い方が広がります。例えば、「走る」という基本的な動きであれば左右にくねくね走る、スピードを変えて走る、コースを変えて走るなどです。
3歳ごろまでは単一的あった動きも、4歳ごろからは複合的で連続的な動き楽しむことができるようになってきます。鬼遊びをさせるとき、3歳児は相手に合わせて動くことができないので、「向こうまで逃げたらOK」というように単純なルールでしか楽しめません。
これが5歳児になると、空間的、時間的、力量的な多様な行い方の工夫が含まれた動きになってきます。相手のスピードに応じて自分のスピードを変化させたり、急に方向を変えたり、止まったりするなどの動きが発現してきます。ふだんの遊びの中でそれを積み重ねてきたことで動きが多様性をおび、高まってきたのです。
行い方の工夫は、具体的には運動遊びの学習の中で経験していきます。こうした経験そのものが日常的に少なくなってきている今こそ、1・2年生にはある種の運動に偏ることなく、様々な運動遊びを幅広く経験できるようにすることが大切となります。行い方のポイントを示してばかりで特別な動きを繰り返すような運動は、「運動遊び」の学習にはならないのです。