「天から舞い降りる雪を受ける」動きをイメージすることができる

子供の学び思考力・判断力・表現力等,技能

能や日本舞踊などの伝統的な踊りの場合、師匠の言う通りに形を整えなければ、稽古は先へ進みません。

そのような稽古の仕方をするなかでは、動きを伝えるための言葉が何を意味するのかについては、一人一人の理解は、かなり曖昧になります。なぜなら、師匠がやっているような形を、見よう見真似に繰り返すだけに終わり、表現者として演じる者の境遇や感情などを伝えられていないからです。

稽古をつけるとは、身振りをそっくりそのまま真似するということとも理解できますが、そんなに簡単にできるものではありません。毎日毎日、舞台脇に坐って師匠の動きを見て取ろうとしたけれども、どうしてもできなかったということは、往々にしてあるものです。

外から見れば、手がどのように引かれ、どのように翻り、どのように伸ばされるかということが重要のように思われます。スローモーションで研究すれば、すぐにできそうな動きでも、それでは、表現者としての動きが身に付いたことにはならないからです。

稽古をすることによって、動きができるようになるということは、その動きをなしているイメージを受け取る、あるいは自分の中でコツを発見する、そのイメージを醸し出す体を自らの内に発見するということになります。扇の開き方でさえ、それはただ扇をさし出すというのではなく、「天から舞い降りる雪を受ける」というような言い方で伝えられている動きを自らの解釈で行います。

扇を開いたとたんに、そのイメージによってピタッと決まって動いた時、師匠の動きが伝えられて身に付いたということになるのです。動きのポイントを明確に示してくれる師匠なんて、いないのです。

*本号をもって令和3年は最終回です。ご愛読、ありがとうございました。令和4年は、1月5日スタートです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

最新ヒントのメール配信をご希望の方は、こちらから登録できます。