「失敗は成功のもと」必要な失敗を経験できるようにする
子供の運動発達の特徴の一つは、それまでできた経験のない動きが成就可能になることです。つまり、できる運動のレパートリーが増えることです。
運動獲得の過程は、彼らにしてみれば大変な努力の連続です。特に1・2年生の時期は、頭部、躯幹が相対的に大きいため重心が高く、立って運動するには都合の悪い形態的な特徴があります。そのため、そもそもバランスが悪かったりよけいな力が入ったりします。運動したことがない運動の成就には失敗を繰り返さなくてはなりませんが、この繰り返しの過程で神経~筋の協調が発達し、新しい運動が成就可能となるのです。
子供が繰り返す失敗は「必要な失敗」ですが、この「必要な失敗」が省略されたり経験できなかったりすることは、子供の運動発達を阻害することになります。しかし、この「必要な失敗」は、当の子供からすれば「失敗」にはカウントされず、「ちょっとうまくいかなかった程度の、たいした問題じゃないこと」と捉えられています。大人が勝手に大人目線で「うまくいかなかったことイコール『失敗』だ。」と認識しているだけです。
1・2年生は、呼吸器系・循環器系や筋力等の機能が未熟であり、酸素負債が運動のスピードを左右するほど発達していません。そのため運動成就の優劣は、調整力に大きく依存することになります。そのため、この時期の子供への指導は、調整力を伸ばせるように多様な運動を経験させることが中心となります。
発育発達曲線を描いたスキャモンは、「10才頃までに発達するのは神経系であるから、ある種の運動や動きに偏ることなく様々な運動遊びを幅広く経験させ、運動の調整能力を身に付けることが大切である。」との考えを示しています。特別な動きを繰り返すような体力UPのためのトレーニングのような運動は、この時期の子供には必要ありません。運動遊びをとおして動きづくりをどのようにしていくかが重要となってくるのです。