5年生とマラソンランナーのスピード比べ
「陸上競技の華」とも言われることがあるマラソン。そのためか、オリンピックなどの国際競技では、最終日に設定されることが多いような気がします。
さて、このマラソンを算数の「見方・考え方」を働かせて捉え直してみると、どんなことが分かるでしょうか? 5年生で学習する「速さ」でマラソンを考えてみます。
2016年のリオ五輪で金メダルを獲得したケニアのエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)選手は、2019年に非公式ながら1時間59分40秒2という人類初の2時間切りを達成しました。マラソンの距離は、42.195kmと中途半端な数字ですが、それはさておき、世界のトップランナーたちは、この約42kmという距離をおよそ2時間で走り切ります。42kmを2時間で走るということですから、時速は42÷2で21kmとなります。
これは、いったい、どのくらいのスピードなのでしょうか。テレビでマラソンを観戦していると、ランナーと一緒に歩道を走っている観客を時々見かけますね。短距離走を走るがごとく頑張っている様子なのですが、数十メートル走っただけでテレビの視界から消えていきます。自転車での並走を試みる人さえいますが、そのくらいのスピードなのです。
小学生にもイメージしやすいように50m走と比べてみましょう。
そうすると、5年生的には「時速21kmで走る人が、50m走をやったら、記録は何秒になりますか? 小数第2までの概数で求めなさい。」という問題になります。21kmは21000mであり、1時間は3600秒なので式は、50m÷(21000m÷3600秒)となり、カッコを外すと50÷21000×3600=8.57と答えが得られます。
あらびっくり。50m、8秒57!!
マラソンランナーは、50mを9秒を切るペースで2時間走っていることになります。令和2年度の50m走の全国平均は、11歳(6年生)男子で8.91秒ですから、6年生がこのスピードを2時間キープできたとしてもキプチョゲ選手らマラソンランナーたちに勝てることはありません。
算数科では、ランナーはスタートの瞬間からゴールまで常に同じスピードで走る想定で計算をします。しかし、体育の「見方・考え方」を働かせると、「スタートでは、ダッシュが必要だから、最初っからずっと同じ速さではないはず。」「走っているうちに疲れてきてペースが遅くなるんだから、どっちみちキプチョゲ選手に勝てないじゃん。」という話になります。