水泳運動系にだけ示される安全への心得

学習内容学習指導要領,態度,水泳運動系

「しばらくそれに待て」「心得ました」

主人に留守番を命じられた太郎冠者と次郎冠者。猛毒で危険であるはずの附子の安全確保に「心得ました」と言いながら、留守番中にその正体を見破り、つい全部食べてしまいます。

水泳運動系にだけ心得が示されているのは、生命にかかわる運動特性があるからです。昭和24年版の学習指導要領試案にも「自己ならびに他人の安全に対する心得…」とあり、その後も、泳げる場所が確保できなくても心得は、必ず指導することとされてきました。戦後すぐのこのころは、プール施設がなかった学校も多かったのですが、心得は海や川で泳ぐときを想定してのことです。

昭和43年版の学習指導要領、第2学年の記載には、「水遊びの前後には、きれいな水で身体や目を洗う」「ひざから腰ぐらいの深さで遊ぶ」「ひとりで水遊びに行かない」「おぼれた人を見たら、大声で近くの人に助けを求める」が具体的な指導事項がありました。この内容は、現代でも通ずるとことがありますね。しかし、平成29年版の第1・2学年には「水遊びの心得を守って安全に…」としか書かれておらず、「心得って、つまり、中身は何?」と言わざるを得ません。心得とは何を指導するのでしょうか。

そのキーワードは、安全です。平成29年版の学習指導要領解説に、安全に関する内容が示されています。それによると第1・2学年では、「準備運動や整理運動をしっかり行う、丁寧にシャワーを浴びる、プールサイドは走らない、プールに飛び込まない、友達とぶつからないように動くなどの水遊びの心得を守ること。また、水遊びをする前には、体(爪、耳、鼻、頭髪等)を清潔にしておくこと。」を例として学習することになります。 実際にプールに入らなくても、また、プールサイドまで行かなくても、これらの内容は学習することとなっています。「2学年間にわたって指導するものとする」と規定されてはいる内容ではありませんが、もともとは、海や川で泳ぐことを想定して作られた学習内容なので、学校のプールに入れなくても心得は身に付けておいたほうがいいでしょう。

さて、留守番の心得が守れなかった冒頭の二人は、「附子を食うて死なうと存じて皆食ひましたれどもまだ死にませぬ」と、「山一つあなた」から帰ってきた主人に言い訳までしましたが、「やるまいぞやるまいぞ」と、こっぴどく叱られたのでした。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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