引き分けを受け入れることも必要な学びです
野球やサッカーで同点の場合、決着をつけるため延長戦を行うことがあります。延長戦でも決着がつかなかった場合、野球では引き分け再試合というケースもあり、サッカーではPK戦を行うこともありますね。
バレーボールやテニスでは、2ポイント先行したほうを勝ちにするDeuceがあります。このほか走り高跳びでは「試技の失敗が少ない人」が、ラグビーでは「トライ数の多いチーム」を勝ちとするなど、「引き分け」にしないようにしています。このようにスポーツは、「相手に勝つかどうかを競い合う」ことを特性として捉えることで勝敗を目的とすることになるので「引き分け」のまま終わらません。そこに、何らかのルールを追加することにより、やむをえない場合を除いて必ず勝敗をつけるようにしています。つまり、勝者を決めなくてはならないことが多いのです。これは、プレーしている当人たちだけでなく、応援している側や見ている人たちも同じように「引分じゃなくて、決着をつけてスッキリしたい。」と思っているからです。
日本の国技である相撲にも、「引分」があります。膠着状態になったときに一度は「水入り」となり疲労回復を図るのですが、「水入り」後も決着がつかず、さらに「取り直し」になっても決着がつかないとき「引分」になるそうです。試合時間の制限がありポイント制や判定が入る柔道やレスリング、ボクシングとちがって、相撲の「引分」には、ほとんどお目にかかったことがないですね。相撲の行事が判定によって軍配を上げるようなことは、ないのです。
100m競走では、タイムが同じ場合でも写真判定によって必ず勝敗をつけますが、同じ個人スポーツである平泳ぎは、タイムが同じ場合なら両者同着というルールになっています。つまり、陸上競技の金メダリストは絶対1人だけですが、水泳の場合、金メダリストが2人いることもありえます。同じ個人競技であっても考え方が違うことに驚きますね。
体育の学習では、「引き分け」で終わるケースがありえます。ゲームやボール運動などチームで行う場合はもちろんです。ゴール型ゲームで同点であっても、延長戦に突入することはなく「引き分け」です。授業時間内に終わるようにしなければならないからですね。
5・6年生の陸上運動では、記録の伸びや記録への挑戦が学習内容にあるので、友達の記録と比べたりチーム対抗にしたりするなど競争するような場面を作ると「引き分け」が生じます。1・2年生なら「マットで速く転がる」「フープを回し続ける」、3・4年生なら「け伸びの距離」「交差跳びの回数」なども、それらを競い合うと「引き分け」になる場合があります。
「勝敗を受け入れる」ことはすべての学年で学びに向かう力・人間性等の学習内容として示されていますが、勝ち負けがつかずに生じる「引き分け」も、その結果を受け入れられるようにします。運動学習としては必ずしも決着をつけなければならないことはなく、むしろ「引き分け」のときの心の持ちようを指導するチャンスです。