背骨の使い方次第で泳げるようになるか?
人間が狩猟によって生活を営んでいた頃、追っていた獲物に川に入り込まれて対岸まで逃げ切られてしまったとき、「もっと魚のようにスイスイ泳げたら…」と何度も地団太を踏んだことでしょう。
「魚のように…」と願っても、人間は水中において背骨を左右に動かして進むことが容易にできません。
陸上では、腰をくねくねとひねって進む「はいはい」が人生のスタートです。ワニやトカゲとおなじ背骨の使い方です。「魚」が、陸に上がって進化したので、この動きには納得できます。
むかしの人間も、「横にクネクネするこの動きなら水中でも速く進めるのではないか」と考えたことでしょう。しかし、水中での背骨の動きは、全く異なります。
人間は、「魚」のように背骨を横方向に動かすことができなかったので、「イルカ」の動き、つまり、背骨の上下動を利用して進むことに水中での活路を見出したことになるのです。
この時代の人間がイルカを直接見るチャンスはなかったでしょうが、後に大海原に出てイルカと偶然出会ったとき、「この動きだ!」と叫んだに違いありません。
バタフライは中学校の内容なのでドルフィン・キックを小学校で扱うことはありませんが、3・4年生の「浮いて進む運動」に背骨を上下に動かして進む動きを取り入れることはできます。
一方、「魚」っぽい動きをしようとして背骨を左右に動かして浮いたり進んだりする動きは1・2年生の「水遊び」で偶然出てくることはあります。でも、「水遊び」としての動きなので「泳ぐ」ということを子供たち自身も目的にしていません。また、3・4年生では腰を左右に振って進む動きをあえて指導する必要はありません。
どうしてもこの動きを見たければ、「けのび」や「伏し浮き」を十分に経験させないまま、無理やり「クロールをやってみよう」と言ってしまえば、すみます。ワニやトカゲが泳いでいるような腰を左右にくねくねさせた、しかし、苦しそうな泳ぎ方の「クロールっぽい泳ぎ」を見ることができます。やらない方がいいです。