なぜ、「体ほぐしの運動」が扱われるようになったのか
平成11年の学習指導要領に初めて登場した「体ほぐしの運動」は、それまでの体育の考え方を大きく変えるものでした。
過去の体育は、鍛えてスポーツをできるようにする授業や、低学年のうちから細かい技能のスキルを追い求める授業、運動したい欲求を満たさないようなトレーニングのような授業、ハイ・レベルの技能を身に付けさせる授業なども行われていました。そのため、運動をすることが好きな子供とそうでない子供の二極化が進み、平均値として体力・運動能力の低下とともに精神的なストレスの増大等が進んでしまいました。
そのような背景から生まれた「体ほぐしの運動」。平成29年版の学習指導要領からは、1・2年生が「体ほぐしの運動遊び」に変更されましたが、小学生から高校生までがほぼ同じ目標で学んでいく運動です。
すべての子供に「体を動かすことの楽しさや心地よさを体験する機会」をもてるようにすることがキーになります。年度の初めや節目などに単元を位置付けることで、ねらいが達成されやすくなります。
「体ほぐしの運動」のねらいは、低学年でも高校生でもほぼ同じで「心と体の変化に気付く」「みんな(仲間)と関わり合う」の2つです。決まった運動があるわけでもなく、低学年でも高校生でも「のびのびと」「リズムに乗って」などが例として示されているのみです。
できる・できないにかかわらず、「運動すると、心がウキウキしてくるな。」「みんなといっしょに運動するのって、気持ちいいな。」というねらいに迫る指導をしていきます。このような趣旨の運動なので、運動をしているのに「技能」を評価の対象としない唯一の内容となっています。