1単位時間45分の使い方をどうすべきか

マネジメント・直接的指導,教師行動学びに向かう力・人間性等,学習課題,思考力・判断力・表現力等,指導者

どのような運動の学習であっても1単位時間45分の中は、およそ3つに分けられます。

 ① めあての確認や場の準備、準備運動

 ② 本時の中心となる運動

 ③ 場の片付けや整理運動、振り返り

これらの時間をどのように扱うかは、取り上げる運動にもよりますが、最終的には、主体的に学ぶ子供自身が45分の時間配分を決められるようにしていくことになります。逆に考えると、単元のはじめの方で子供が学習課題を見出すことができていない状況では、このような時間のコントロールは指導者主体で行っていくことになります。つまり、学習課題に基づいて運動することができる前の状況にあるとき、課題解決の方法を指導することが必要なのです。

学習課題を見出すことができていて課題解決の方針も見つかっている子供は「今日のめあては〇〇だから、こうやっていこう。」と決めています。そのような状況になっても、指導者が「はい、じゃ、これからチャレンジタイムです。」というように時間を区切ってしまうことは、学習課題にもとづいて主体的に学んでいる子供にとって迷惑な話にもなりかねません。

しかし、この場合でも、指導計画を頭のなかで描いている指導者としてはメインの学習となる②だけで30分間は確保しておきたいところです。②の30分間を大きく前後半に分け、それらの間に前半の簡単な振り返りを挟んでから後半の学習内容に入ることがよくあるパターンです。その時間配分は、扱う運動や子供の実態によって異なります。

鉄棒運動ならば前半に「運動遊びの学習に戻って感覚を磨く」や「いま、できる技で楽しむ」を行い、後半に「もう少しでできそうな技をやってみる」「できない技に挑戦して楽しむ」のような組み方があります。多様な動きをつくる運動なら「バランスをとる運動」を前半で少なめに、工夫がしやすい「用具を操作する運動」を後半で多めに設定します。ハードル走なら前半に「自分に合ったコースで練習」する時間を多くとり、後半は互いに「記録を計る」という具合です。

ゲームやリレーでは、ほかのチームと競争(競走)することもあるので、学級全体をコントロールして②の時間をさらに区切る必要が出てくることにもなるでしょう。ゲームでは、②の30分間を前後半とせずに3回のゲームを行えるようにして、ゲームとゲームな間に各チームで簡単な振り返りをすることもできます。そのときに自分の学習カードやノート、作戦盤などの資料を活用する学びも期待できます。

単元のはじめの方には、この2つの「どのように楽しむか」「どのように学習課題を解決していくか」を経験できるように指導者がリードしていきます。単元が進めば子供が自分で「今日の残りの時間も、前半の続きにしよう。」と自ら決めることもOKにできるはずです。学習課題が、どの程度まで解決に近付いたかによって、その後の学びを子供自身が決めるというスタイルです。

学びの進み具合によっては、ゲームやリレーのスタートも子供たちが決めて「練習→ゲーム→…」といった学習の流れのコントロールも自分たちでできるように仕掛けておくこともできます。ゲームの場合は、対戦する2つのチームが互いにOKならば、その2チームでゲームを始めることもできるからです。

リレーの場合も、クラスの全チームが一斉スタートではなく、競走するのか計測するのかを自分たちで考えて学びの調整をしていくことも考えられます。特に5・6年生の場合は、校庭のトラックを使うことがあるので他のチームの練習の状況などを見計らいながら自分たちで学びを進めていくことも可能です。クラスの全チームが一斉にスタートしなくてもいいのです。

③には学習の振り返りという大切な内容が含まれます。学びっぱなしにならないようにしたいところです。この振り返りが軽視されている授業がよく見られますが、ほかの教科等と同様、体育においても振り返りは重要です。

通常、準備より片付けのほうに、準備運動より整理運動のほうに時間がかからないので、学習カードやノートへの記入や分かったことの発表などを考えると①より③が少し多めの時間配分となります。そもそも子供の学習課題が明確であればあるほど、毎時間①で「今日のめあての確認」をする必要もなくなります。

なお、③の振り返りの部分については、授業の最後だけに限りません。子供は運動するたびにいちいち「あ! 今のはうまくいった。」「こうやったんだけど、これじゃできないな。」などと細かい振り返りをしています。そのため子供によっては、②の途中に③を組み込むような形で学習カード・ノートを自分で引っ張り出して記録することもあります。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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