合理的で心地よい動き、それが陸上運動系の特性です
向こう岸まで跳び越えられるかを遊びながら競ったことがおそらくその起源となった走り幅跳び。踏み切った地点から着地点までを計測すればいいものを、踏み切りを越えたらファウルしてしまうのは、「目の前にある川に落ちちゃうからアウト」という遊び心に起因する考え方からでしょう。
走り幅跳びは、古代オリオンピックでも花形競技でした。「走る」ことが速い場合、より遠くへ「跳ぶ」ことができる可能性が高くなることが知られています。かつてオリンピックなどで活躍したカール・ルイス選手は、その顕著な例です。1・2年生が、遠くの方から助走してくるのは、そのような思考に基づいています。
しかし、「走る」ことが速いというだけで必ず遠くに「跳ぶ」ことができるかというと、そうでもありません。そこには、合理的な運動の行い方の存在があるのです。
陸上運動系の特性として、「合理的で心地よい動きを身に付ける」ことがあります。「走る」と「跳ぶ」という日常的な誰でもできる動きを組み合わせた運動だけに、合理的な技能を要求しなければ試技が成立する易しい運動とも言えます。
しかし、逆の言い方をすれば、「走る」ことがものすごく速くなくても合理的な技能を身に付けることで「遠く」に跳べる可能性があることを示唆しています。 「合理的で心地よい動き」とは、自分に合った無理のない動きや無駄の少ない動きと捉えることができます。
走り幅跳びでは、いろいろとフォームを考えすぎるとかえってぎこちない動きとなってしまいます。学習指導要領には「リズミカルな助走からの走り幅跳び」と示されていますが、これは、一連の動きがある程度滑らかで無駄が少ない行い方のことで、これが「合理的」ということなのです。