手当ての効果は、本当にある
お腹が痛いときにお腹をなでるという行動は、誰もがやったことがあるのではないでしょうか。

「お腹が痛い。」と保健室に来ても、しばらく椅子に座わって手のひらでお腹を押さえてかがむようにしていると「よくなったような気がする。」と言って、教室へ戻っていくこともあります。痛みや不快を感じる場所に無意識に手を当ててしまうのは、手に癒やしの効果があることを本能的に知っているからでしょうか。
これが「手当て」の語源になっているという人もいますが、優しい表情や言葉よりも「手当て」には絶大な効果があるようです。
人間の手のひらは、微細の動きができるように筋肉が発達しており、そのため柔らかくて温かく、いい感じがするものです。そのため、不安や緊張を感じたときに心を落ち着かせる以外にも、手のひらによる効果が期待できます。
周囲の大人から「いい子ね~」と頭をなでてもらったり、「すごい!」と肩をさすってもらったりしたときもそうです。
こうして人間は、体に手のひらを当てて撫で、さすることで感覚を覚醒させ、体と心と、さらに頭までもつなげようとしたのでしょう。お腹が痛いときにはお腹を撫で、頭が痛ければ頭を抱えるなどの行動は、いずれも身体に自然に備わっている行動と考えられます。
なお、「看」という字は、「手」と「目」で構成されていますが、これは「手と目によって患者を看る」という意味があります。また、からだの部位を表す言葉の中で「こころ」 がつくのは、手のひらを表す「掌(たなごころ)」だけというのも、先人達が「手当て」の効果を知っていたからでしょうか。