”動き方”は動画でも「わかる」が、”動き”はやってみないと「わかる」にならない
運動指導で大切なことは、子供の動きに「どんな感じで動こうとしているのか」を見抜かなければなりません。「どんな動き」ではありません。その動きに対して、「どんな感じでやれば、できそうだ」と思っているのかに対して、指導者は共感すべきなのです。
だからこそ、子供がその動きをやってみたあとに指導者としては「どんな感じだった?」と探りを入れるのです。
探りを入れる前から「あ~、できなかったね~」などと見た目でのジャッジを子供に伝えることもありません。できたのかできなかったのかは、当の子供自身が一番よく知っているからです。
子供が「~~な感じでやってみたけど、あんまりうまくいかなかった。」とでも答えたならばそのことをとおして、必要な課題や道しるべになるような支援をそのつど考え出します。できるようになるための「コツ」は、子供自身にしか分からないので、その時点で指導者も一緒に子供と学んでいることになります。
指導者が子供の動きを観察することは、ただ単に外側からの観察だけでなく、子供が今どんな感じで動こうとしているのかに共感することです。それをもとにして、はじめて動きの感じの支援が可能になるのです。
子供に視覚情報としてICT機器を活用して図や動画を提示することがあります。しかし、それは「動きの形」や名前、種類を示したにすぎず、「動きを教える」ことになっていません。子供は、動き方が「わかる」だけですから、「ああ、あんな形の動きなんだな」と、見た目の形についてのイメージを理解するに留まります。
「動き」が「わかる」ということは、たとえば、マット運動の後転なら、子供がどのように身体を動かして、いつ、どこでどんな感じで力を入れれば後転の動きを、子供が自分自身で生み出すことができるのかという意味のことなのです。その「動き」をやってみて初めて「動き」を学ぶことになり、その先に「動き」が「わかる」ことになります。