「姿勢をよくしましょう」に従順な子供を育てようとしているのか?

子供のからだ態度,身体,集団行動

「姿勢をよくしましょう!」と日直が声をかけても「この子たち、全然やってないな。」と思うことがあります。子供の方も、自分が日直になった日だけは「いい子」を装っていますが、ほかの日は、何事もなかったふうに「どこ吹く風」です。

ある意味、同調圧力がややもするとかかりがちな日本の学校で見られるこの風景。指導者が、「学校の授業では、子供に規律ある行動をさせる必要がある」という思いが強い場合に出現します。「子供は、よい姿勢を保って学ぶべきだ。」と考えているからでしょうが、主体的・対話的で深い学びを阻害するかもしれない思考です。

それはさておき、ところで、この「よい姿勢」とは?「背筋をピンと伸ばす」「両膝を揃えてくっつける」「手の指先まで伸ばす」などが、その理想とする形でしょうか? 子供にとって「よい姿勢」とは、何でしょうか?立ったままの「よい姿勢」は、「気を付け」であるという感じがしますが、「気を付け」イコール「よい姿勢」とは、どこにも記載がありません。もしも「よい姿勢」であったならば、人間の感情としてその姿勢を崩さずに、ずっとキープしていたくなるはずです。胸を張って、顎は引き、背すじの伸びた立ち姿を「よい姿勢」と受け止めているにもかかわらず、その姿勢は、必ず短時間で崩れます。見栄えはしても、体にとって不自然な姿勢であるため、疲れやすいからです。

もともと「気を付け」は、西洋の軍隊で、教えたり監視したりする上官の立場に立った時に都合がよかった姿勢でした。これとは異なり、日本の兵隊の「キヲツケ」は、直立不動の姿勢です。しかし、張り切っている1年生がよくやるような背筋をピーンと伸ばして胸を張る姿勢が、「よい姿勢」ではありませんでした。なぜならこの姿勢では、踵荷重になるため、すぐに動き出せず、上官の命令に即座に対応できないからです。日本流の「キヲツケ」は、上体を腰から少し前に傾けるようにつま先荷重になっており、すぐに前進できる合理的な姿勢だったと言えます。 猫背こそがよく動ける体だからです。

伊藤博文の写真を見ると、総理大臣の時はピシッとしていますが、岩倉使節団の頃の姿勢はやや猫背にも見えます。

逆に背筋が伸びている姿勢の人間は、虚勢を張って豪傑風に見えるだけで、実は動けないガチガチな体の持ち主と見られ、「たいした人間ではない。」と格付けされたのです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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