似ているようで違う「対話的な学び」と「協働的な学び」

こども,子供の学び,学習内容主体的・対話的で深い学び,令和の日本型学校教育,個別最適な学び,協働的な学び,学習指導要領

平成29年版学習指導要領で「対話的な学び」がすでに提起されているにもかかわらず、令和3年中教審答申「令和の日本型学校教育」では「協働的な学び」が提起されました。似ているような感じのするこの両者は果たしてどのように異なるものなのでしょうか。

まず、「対話的な学び」は、主体的・対話的で深い学びというセットの一部です。そもそもは、指導者にとって授業改善の視点なのですが、子供にしてみれば学びの視点とも言えます。

平成29版学習指導要領解説総則編では、「対話的な学び」を「子供同士の協働、教職員や地域の人との対話、先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ、自己の考えを広げ深める『対話的な学び』」と示しています。「対話的な学び」には、子供同士に限定されていますが、もともと「協働」の要素が含まれていることになります。

一方、「協働的な学び」は、「個別最適な学び」といつでもどこでも常にペアを組んでいます。「令和の日本型学校教育」のもとである令和3年中教審答申には、「『個別最適な学び』が『孤立した学び』に陥らないよう、(略)子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、(略)必要な資質・能力を育成する『協働的な学び』を充実することも重要である。」となっています。

そこかたさらに「令和の日本型学校教育」の中では、「協働的な学び」は主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につなげるものと説明されています。 一人で「個別最適な学び」に集中するのはよいが、それが没頭したまま独りよがりな「孤立した学び」にならないよう、「協働的な学び」も自分の学びに含んでいくようにすることで、「主体的・対話的で深い学び」が実現できるだろうという解釈になります。

「対話的な学び」の中に地域の人との対話や先哲の考え方が含まれていようとも、それは、授業改善の視点なので教育活動の一環です。しかし、子供一人一人の主体的な学びのベクトルが教材との出会い、子供同士の協働、地域や先哲との対話などのあらゆる対象に方向づけられている状態を「対話的な学び」は指しているとも言えます。

対話や先哲の考え方を「対話的な学び」として自分の学びに取り入れるかどうかは、子供一人一人の「個別最適な学び」の問題となります。たとえ対話や先哲の考え方を学びに取り入れたとしても、それが「孤立した学び」にならないようにしていくために「協働的な学び」という学び方も、自分の「主体的・対話的で深い学び」として身に付けるのです。

「協働的な学び」は、このような学校での「対話的な学び」を前提としつつも、子供同士の協働に限ることなく、「協働」する対象を家庭、地域、社会へと最大限に拡げての「協働的な学び」を最終的には目指しているものと考えられます。

学びのベクトルが一方向だけでなく双方向にも行き交う「対話的な学び」のスタイルに加えて、子供一人一人が孤立せず、子供同士だけでないあらゆる他者と複数のベクトルが相互に絡みあったりしている状態までを含めて「協働的な学び」と捉えることができます。

そうすることで、29年版学習指導要領の前文にある「多様な人々と協働しながら…持続可能な社会の創り手となることができるようにする」のです。こう解釈すると、社会に開かれた教育課程を実現することが重要であることも納得できます。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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