こみあげてくる運動衝動の源泉を掘り当てるようにする「体ほぐしの運動」
「体ほぐしの運動」が取り上げられるようになった背景には、子供が、それまでの体力づくりの考え方や各運動種目の技能を高めることをねらいにした運動では、学びが成立しなくなってきたという実態がありました。
そうした子供たちの現状からして学習することが難しいとの認識から「体ほぐしの運動」は、作られました。体力の向上や運動を学習させる以前の問題として、人間として幼児期に経験しておかなければならないような運動遊び経験の欠如に原因があることが明らかになったからです。
ふだん運動をしているときには、運動がうまくいったときや動き方が少し変わったときなどには快い感じがします。逆に、失敗したりうまくいかなかったりしたときは嫌な感じがするものです。
しかし、体を動かすことそのものを嫌がっている子供は、運動の経験がもともと少ないことから、運動することによって生ずるこれらの感情が十分に育っていません。それどころか「できるまで、がんばれ」と上昇志向を求めるよう言われ続けてきたので、やったことがない運動に対して始めから不快な感じをもっていることが少なくありません。
そこでまずは、体を動かすことが楽しい運動や快い感情が体験できそうな運動を提示し、「やってみようかな~」という気持ちを引き出すところから始めることになります。 ここから少しずつ動きの感情を表現できるようになれば、体を動かす中で「体ほぐしの運動」のねらいが自然に感じ取られ、意識できるようになってくることが期待できます。
運動することによって得られる感情は、内心からこみ上げてくる「やってみたい」「やってみよう」という運動衝動の源泉になるもので、この感情を大切にする学習こそが、「体ほぐしの運動」がねらいとする自分の体への気付きや体の調子を整えることにつながっていくのです。