トリプルアクセルの技能ポイントを分かっていても「できる」ようにならない
トリプルアクセルは、当時「浅田の代名詞は、トリプルアクセル」と言われたくらい世界でもできる選手がほかにいないほどの大技でした。フィギア・スケートの浅田真央選手は自身のプログラムの前半に必ず入れて、「トリプルが成功するかどうか」が注目の的だったので、一般にも知名度の高い技です。
トリプルという名前ですが、踏み切りが前向きで跳ぶ(これが、アクセル)であるため、実際には3回転に加えて半回転が必要な難易度が高いジャンプです。技能のポイントは、「前向きのまま、回転する方向に足を振り上げると同時に両手も振り上げ、体を細くするようにして3回半まわって、踏み切り足と逆の足で後ろ向きに着氷する」です。
さて、技能ポイントを理解して、トリプルアクセルの映像も頭に焼き付いて、「じゃ、みんなでやってみよう」と言われて跳べますか?
技能を「できるようにする」ことは、より楽しく運動するために重要ですが、似たような感じの動きを過去に経験していないと、その動きの感じが分かりません。走り幅跳びの映像と技能ポイントを理解していても、走り幅跳びと似たような感じの動きである「だるまさんがころんだ」で遊んだ経験がないと、「助走をこうやって、踏み切りではこんな感じで、空中姿勢は…」と一つ一つの局面を考えながら運動することになってしまい、もはや走り幅跳びとして成立しません。割り算の筆算ならばゆっくりやってもいずれ答えにたどり着きますが、運動はメロディのように一気に流れていくので、映像と技能ポイントを示しただけでは「できるようにする」ことはできないのです。
技能ポイントが書かれた掲示物を張り出して教えたような気になっている授業を見ますが、これは、運動を教えているだけで技能を身に付けられるよう指導していることになりません。掲示物を見ただけで「ああ、あれなら、○○の動きっぽいから△△のような練習をしたら、できるようになるかもしれない。」と思える子供は、果たしてクラスに何人いることやら…。