「つなひき」は、なぜ、学習指導要領に載らないのか

学習内容体の動きを高める運動,多様な動き,学習指導要領,技能

「綱を引く」ことには、古代より世界各地で豊作を祈る行事や争いごとを鎮める手段など様々な目的で行われ、その形態も様々でした。

「引く」という単純な動きのため誰にでも簡単に行える運動の一つで、おそらく、大昔の子供たちも、互いに引っ張りっこして遊んでいたことでしょう。鳥獣戯画にも、長いひも状のものを輪にして互いの首の後ろに引っ掛けて引き合っている遊びが見られるほどです。

このように「引く」動きは、その形こそ異なりますが、そこには勝ち負けの判定が存在し、そのための一定のルールがあるので、仲間同士で競い合うことができます。

廃止された数々のオリンピック種目の中で、ルールが簡単で分かりやすかった綱引きは例外的に高い人気を誇っていたそうです。オリンピックでは、相手チームを中央の線から6フィート張れば勝ちというルールでした。各国の綱引きに対する思い入れは熱く、「スパイクシューズは、ズルなのかどうか」と国際的に議論になったほどです。

運動会で学校の中にも取り入れられるようになった綱引きですが、学習指導要領にその名は見当たりません。力を入れ続けるような動きとして位置付いている「引く」動きは、「押す」に比べてそれほど重要視されていなかったのでしょう。 「引く」については、多様な動きをつくる運動(遊び)に例示として記載があるにすぎません。

漁師の手伝いをしながら船上で網を「引く」ことで強靭な足腰を身に付けた元横綱千代の富士は、歴史に残る大横綱としてその名を馳せました。「引く」動きには、腰の構えや足の踏ん張りなど力強い動きを高めるための課題が明確にあり、その解決にもってこいなのが綱引きであるとも言えます。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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