動きを引き出す言葉をかけることで、子供が動きのコツに気付いていく
1・2年生のボール蹴り遊びでサッカーっぽいゲームを提示してしまうと、1つのボールに群がった団子状態に必ずなります。必ず、です。
その場その場で自分が蹴りやすいように蹴っているばかりで、せっかく蹴ったボールが友達にぶつかってもお構いなしです。蹴る方向も不正確で必ずしもゴールにめがけて蹴っているようにも見えません。
蹴ることそのものがおもしろい遊びなので1つのボールに全てのプレイヤーが集結して蹴り合うだけで、誰も「パス」をしません。そもそも「パス」する相手も自分の近くにいるのですから「パス」の必要性もなく、また、「パス」の重要性を考える水準の思考力や判断力は身に付いていないので、学習させようとしても徒労に終わるだけです。
例えば、平均台で「両手を真横に広げてバランスを取りながら、しっかり前を見て少しずつゆっくり渡りましょう」と動きをあらかじめ提示するのではなく、動きを引き出すようにします。「落ちないように渡るには、どうする?」の一言でいいのです。そうすると子供は、手をどうしたらいいのか、どこを見ればいいのか、どのくらいの速さで渡ればいいのかなどを考え工夫して渡り方のコツを掴んでいきます。
1・2年生の技能は5・6年生に比べれば単純に見えますが、大人からの発想に過ぎません。彼らがこれらの単純な動きを楽しめるのは、それが彼らの発達的な特性だからです。彼らにマッチしたその技能が多くの運動遊びを楽しくさせているのです。
運動遊びで動きのコツに気付く経験が不十分なまま学年が上がってしまうと、6年生になっても思考力・判断力・表現力が身に付きません。運動遊びの技能は、大人から見て簡単に見えるだけで、実は、そのあとの学年に続く体育の学びにかなり重要であるということを、指導する側として心しておかねばなりません。