子供は、「小さな大人」ではありません

モニタリング・相互作用,子供の学び学習指導要領,技能,指導者,発達,遊び,運動遊び

子供の発達的特性を考えないままに運動遊びの授業を構築してしまうと、より大人に近いようなパフォーマンスができる子供を育成するという方向性をもって指導してしまうことになります。常に「小さな大人」を育てるという潜在的思考、これは、NGです。

「小さな大人」で考えると、大人の文化として発展してきたスポーツそのままでは子供にとって大変だという思考になります。そうなると、例えば、100m走を1年生向けに30mにするなど量や回数を減らしたり単純にしたりすればいいという安易な発想が生まれてしまいます。

この「小さな大人」の考え方による指導では、より大人のパフォーマンスに近い子供が「上手」と評価されることになります。逆に、大人から離れた存在の子供が「下手」と評価されてしまいます。未分化、未発達の状況にある1・2年生の運動遊びの指導では、絶対に避けなくてはなりません。

この時期に「下手」と評価された子供は、運動に対する有能感の認知が成立しにくく、むしろ、無力感が形成されやすくなるからです。その後、運動することでの有能感を認知する機会を失っていく危険性もあります。

1・2年生は、走るときに自己の記録を伸ばすためにフォームを身に付けることが楽しいわけではありません。走ることそのものの爽快感や仲間と競争することそのものを楽しんでいるのです。そして、「勝った~。」「もう一回、やろうっ。」と言いながら走ることを楽しむうちに、「こうやったら速く走れるんだな。」と、技能を身に付けていくのです。

「小さな大人」を作り出すために、同じことを繰り返すドリル的な練習をしたり、一方的な教え込みになったりしては、運動遊びの学習は成立しません。子供を「小さな大人」「能力の低い大人」として考えるような子供の発達観から転換し、いろいろな運動遊びが将来の運動への取り組みに発展していくという発達的視点に立って授業を組み立てます。

そして、「小さな大人」という考え方をしないことは、何も運動遊びの指導に限った話ではなく、体育の学びにとって重要な考え方なのです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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