指導内容の系統性は、下から上へ見る

マネジメント・直接的指導学習指導要領,指導者,発達,運動遊び

「基本の運動」は、昭和53年版学習指導要領から位置付いていた運動領域でした。それまであった体操、器械運動、陸上運動、水泳、ボール運動そしてダンスという6つの運動領域について、これら特定の運動種目によらない観点から、内容を構成し直したことによって誕生した新しい考え方による領域でした。

このようになったのは、昭和53年版から体育科の目標に関する考え方が変わったことにあります。運動が単に体力つくりや人間形成のための手段でなく、運動することの楽しさを味わえるようにする、運動することそのものが目的であるとなったのです。

これが現在まで続いている、いわゆる「楽しい体育」のスタートでした。児童の立場をより一層重視する考え方では、特に1~4年生の発達的特性と運動の特性との関係を踏まえたとき、その運動の特性に基づく学習をすることが困難であると考えられました。

その「基本の運動」は、平成20年学習指導要領から、姿を消しました。指導内容の明確化・体系化の視点からすると、「基本の運動」は高学年以降への系統性が見えにくいものとなっていたという理由からですが、見えにくいに決まってます。そもそも「基本の運動」ができたときから運動の特性で分類していないのですから…。

「基本の運動」に示されていた内容は、それぞれ新しい運動領域となり、「〇〇運動系」などに整理されて見た目の系統性は明確になりました。しかし、これまでどおり、児童の発達的特性を踏まえた運動内容を取り上げることに変わりありません。

系統性だけが独り歩きしてしまうと、「高学年が80m走だから、低学年は30mくらいかな?」など、上の学年の運動を簡単にしたら下の学年の内容になるものと勘違いしてしまう指導者も出てくることが危惧されます。系統性に関する指導者の理解は必要ですが、上から下への系統の把握だけでなく、今、この発達段階で学ぶべき内容は何か、この学びがこの先どのように発展していくかという視点による下から上へ向けた系統性の考え方が不可欠となります。

下から上への発展性を前提にしない体育は、学びとはならず、それは、単なる上学年の運動のための練習のようになってしまいます。子供を置き去りにしたこのような考え方による系統性の理解は、ぜひとも避けるべきです。これは、何も低・中学年の「基本の運動」に限った話でなく、ほかの教科等を含んだ子供の学び全般に言えることです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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