見切り発車もできるような学びを保証する
日本の電車は、かなり時刻表通りに運行されていることで有名です。もちろん、そのことで高い安全性が保たれているので鉄道関係者の方々には敬服いたします。
しかし、時々、通勤ラッシュの時間帯や乗客のマナー違反などによって若干の遅延を生じることがあります。「駆け込み乗車は、おやめくださ~い。」と放送されても息を切らして駆け込んでくる乗客があるためなのですが、「発車時刻過ぎてるだろ~。早くしろよ!」などと思わないのは、ここで見切り発車でもされようものなら事故を誘発する可能性があるからでしょうか。事故でこの電車が止まったら、復旧するまで自分がその場から動けない状況となるのは誰もが避けたいことですからね。
見切り発車は、「NOプランだけど、とにかくGO!」といった無鉄砲なイメージがありますが、実はそうではありません。「プランがあるんだけど、どれにしたらいいか結論付けられないな~。でも、時間がないから、取り敢えずこの方法に決めて、GO!」という意味です。
ですから、見切り発車にはマイナスイメージがなく、むしろ積極的に試してみる価値がありそうな方法を1つ決めて「やってみる」ことなのです。この思考回路は、子供が何かにチャレンジしようとしているときにもよく働きます。子供が自分の学習課題を探っているときに見られる過程です。
台上前転をやったことがない3年生に「跳び箱の上で前転してみよう。」と言うとどうなるでしょう。「えっ? それって、跳んでるんじゃないんじゃない?」「マットでなら転がれるけど、跳び箱だと踏み切りが必要だな。でも、どうするんだろう?」「おしりが跳び箱から出て、落っこっちゃうかも…。」など、これまで経験して得られてきた数ある情報の中から頭の中で編纂を重ね、正解を作り出そうとします。しかし、このプロセスを経てもなお「跳び箱の上で前転してみよう。」の正解が分からないので、「こんな感じなんじゃないかな」「このタイミングでやれそうかな?」などと1つの考えが正しいのだろうと仮定して「やってみる」となるのです。
「やってみる」こと自体も面白いと感じる子供の学びは、常に見切り発車的な状態なのかもしれませんが、子供たちは、決してNOプランで学んでいるのではありません。しかし、「やってみる」を引き出すために、「台上前転をしてみよう。」でなく「跳び箱の上で前転してみよう。」という見切り発車ができるような仕掛けをすることも大事なのです。