自分にとって都合のいい「いまの、なし!」
子供たちが2人以上遊ぶときには、たいてい暗黙のうちにルールが決まっています。何も決まっていないと参加者それぞれが好き勝手に遊び始めるので、仲良く一緒に遊ぶことができないからです。
複数の子供たちが新しい遊びを考え出すとき、「まぁ、とにかく、やってみよう。」から始まります。そのときすでにシンプルなルールだけが決められており、その遊びの参加者が一時的に納得した状態から始めていることなります。ルールをきっちり決めることより「やってみたい。」感情の方が、圧倒的に強いので、「細かいルールは、やってみてから決めればいいことだ。」と了解しているからです。
たとえば、何人かの仲間が集まって1つのボールでどうやって遊ぶかを考えようとするとき、遊び場所の広さはどの範囲にするか、チームを決めるべきか個人対抗か、どのような結果を「勝ち」とするのかなど、新しい遊びの基本的なルールを決めないことには、始まりません。そして、実際に「やってみる」ことを通して「もうちょっとこうしたら、おもしろいんじゃないかな」と、遊びの中で子供たちは思考をいつも働らかせているのです。ある程度の仮説を立てて、遊びながらそれを検証していくことを繰り返します。
しかし、自己中心的な部分が残る幼児の場合では、自分が負けそうになってくると自分の都合のいいようにルールを変えることもよく見られる光景です。ルールを変えることがなくても「今の、なし!」と言い放ち、それまでのパフォーマンスをチャラにしてしまう身勝手さもあります。
一緒に遊ぶ参加者が決めたルールを変えてしまうことを「失敗」と捉えてしまう子供の場合、初めのシンプルなルールだけでは納得できないため、「やってみよう。」という気になかなかなれません。最初に詳細にわたってルールを決めておかないと安心できないからです。失敗しない遊びしか経験してこなかったことが考えられますが、そもそも主体的な活動である遊びには、「失敗」という状況がありません。