いじめを助長する可能性があったドッジボールの学び
Dodgeballの「Dodge」は、「すばやく身をかわす」という英語です。「ボールを当てる」ことが目的の遊びですが、本来の意味は、「ボールをよける」です。そういえば、「ボールを当てる」子供は限定されており、ほとんどの子供は「ボールをよける」ことを楽しんでいますね。
ドッジボールは、円形コート内で二組に分かれ、互いに飛んで来るボールに当たらないようにすることを競い合うDeadballが、その原型とされています。このときは、防御する技能として「キャッチする」ことが認められていなかったので、ボールをひたすらよけ続けることなります。
もし、防御者がボールに触れれば「Dead」という規則だったので、キャッチしても「Dead」でした。昭和33年、体育科の内容としてこの運動が取り入れられる際に、死を意味する「Dead」でなく「Dodge」というゲームの様相が分かる運動名と変えられ、円形ドッジボール等となって学習指導要領に初めて登場します。
しかし、ドッジボールは、平成元年版の学習指導要領から単なる例示扱いになりました。例示ですから「たとえば、こんな運動があるから、やってみてもいいですよ。」という扱いです。外遊びが減って運動しない子供が増えてきている中、ドッジボールではボールをよけてばかりいる子供が多くなり、パスやキャッチができないまま上の学年になってしまうのでバスケットボールなどのゲームが成立しないと指摘されるようになったからです。さらに、ボールの扱いに弱い友達にボールを当てることがいじめを助長する可能性があるなどの理由で、平成29年版の学習指導要領からは、完全にその姿を消しました。
1・2年生でのボールゲームの扱いは、5・6年生のゴール型(例えば、バスケットボールなど)の技能に大きく影響します。一人1個のボールを持ってたくさん投げられるように工夫した的あてをしたり、簡単な規則でのボールゲームをしたりするような学習により、投げる、捕る、転がすなどのボール遊びを十分に楽しめるようにします。
1個のボールだけでクラス全員が行うようなドッジボールは、今や、学級活動や休み時間に楽しむだけの運動となり、体育で学ぶことはなくなりました。