鉄棒運動が嫌われる理由
体育の授業での好き嫌いを聞くと鉄棒運動は嫌いな上位に挙がってきます。その理由について考えてみます。
1つめは、鉄棒から受ける「いやな感じ」です。そもそも「痛い」ので嫌いということもあるでしょう。ぶら下がったり腕支持の姿勢になったりするとき地面から足が離れるので、不安感をもつ子供もいます。
鉄棒をクルクル回る「技」の形は絵図で理解していても、実際に自分の身体がどうなるのかイメージできない子供は、「鉄棒から落ちたら」と考えると怖くなり、なおさら思うように体を動かすことができなくなるのです。
2つめは、技について「できる」「できない」が明確に評価されることです。うまくできるかどうかはともかくとして、ゲーム中にボールを投げることはできますし、走り幅跳びで跳ぶことはできます。
しかし、鉄棒運動では、最後まで行かないうちに途中で動きが止まったり、下に落ちてしまったりすることがあり、その時点で「できる」という評価になりません。同じ器械運動系でもマット運動なら後転でさえ頭を肩越しから抜く形なら「できるような気がする」のですが、その点、鉄棒運動の「技」は「できる」「できない」がはっきりしています。
3つめは、鉄棒運動では日常的な動きと異なる体の使い方を求められることです。日常的な動きとは、頭が上で足が下、おなかが前というような定位感です。
鉄棒運動には、ぶら下がったり回転したりすることが「楽しさ」なので、これを味わえるようにすることが目標となります。これらの動きは、多くの学校で休み時間にも遊べるチャンスがたくさんあります。
鉄棒上で腕支持しながら回転するとき、自分の身体がこの先どうなっていくのか分からない子供は、不安と怖さを感じてばかりで、「楽しさ」を知らないままです。逆さまになったり回転したりして遊んだことが少ない子供は、鉄棒運動の「技」に出会っても「でそうな気がする」「やってみよう」という状態には、なかなかなりません。そのためには、鉄棒を使った運動遊びや固定施設遊びで様々な動きをして遊べる体験がどうしても欠かせないのです。