赤ちゃんのみなさん! もっと、「はいはい」しよう
おなかをつけたままでもなんとかズルズルと移動しようとする赤ちゃんは、そのうち、「おなかをべったりつけているよりも胸を少し上げて肘で支えるようにするほうが、高いところから見えて面白い。」と気付きます。
その後は、「いろいろな物がもっと見えるよう、顔の位置をより高くキープするにはどうするべきか。」という課題を解決することに全力を注いでいくようになります。赤ちゃんなりの学習課題のようなものです。
このときに生まれてくる動きが「はいはい」です。はじめは、おなかを床に付けたままの「ずりばい」ですが、それでも、ちょっとは面白い景色が広がっています。人生で初めての動きなので疲れますが、寝れば元気回復です。
「ずりばい」に慣れてくると、床にべったり着けていたおなかが浮くようになります。体幹に力を入れることができるようになるからです。
「はいはい」では膝を床に着いていますが、腕は上半身をしっかり支えています。マットや跳び箱の技能である腕支持の感覚が磨かれています。次第に膝が少しずつ床から離れるようになるとスピード感も味わえるため、いくら転んでもニコニコしながら這いずり回ります。もちろん、転んだところで「失敗」とは思っていません。「転ぶって、これはこれで、おもしろい!」と思っているに違いありません。
こうして、自分の知る世界が格段に広がっていく楽しさを味わってしまった赤ちゃんにとって、狭い家に家具が増えた最近の住宅環境は、つかまり立ちしやすい条件が整いすぎています。つかまり立ちから家具伝いに歩ける場が潜在的に設定されており、そこに赤ちゃんの内発的動機がマッチして、早々に一人で立って歩けるようになってしまうのです。
「うちの子は、すぐに歩けるようになった」と喜ばれるほど、歩く技能の獲得は赤ちゃんや周囲の人にとって大事件です。そのため、「はいはい」の期間が短いことが、腕で体を支持する感覚や体幹を締めるために力を入れる感覚を十分に磨けないまま成長してしまうデメリットを抱えていることに気付きません。
すぐ地面に座り込んでしまう若者は、このような技能獲得の経過をたどっているため、基礎的な感覚が養われてこなかった可能性があります。