死屍累々 昔ながらの組体操の指導を顧みる

学習内容学習指導要領,技能,指導者

昨今、学校の運動会から「組体操」というプログラムが見られなくなってきました。けがのリスクを負ってまで子供に取り組ませる根拠がはっきりしなかったからです。

もし、「組体操」をやるにしても、体育の学習内容として位置付けることができる動きは、「気をつけ」などを含む集団行動とマット運動で扱う「バランス」や二人で助け合って行う「補助倒立」くらいです。三人以上が組む動きは、体つくり運動での人運びくらいしか学習指導要領に例示がありません。仲間の支えにより自分の手も足も接地していない状況は、「三人組で互いに持ち上げる、運ぶ」しか見当たらないのです。従って、「組体操」で扱われてきた多くの動きは体育としての学びとはならず、授業時数にもカウントができないと言えます。

「組体操」っぽい動きは、昭和24年に戦後初めての学習指導要領が作られようとした時の「試案」に二人以上で組んで行う徒手体操の例が載りましたが、昭和33年の学習指導要領から完全にその姿を消しました。

昭和24年学習指導要領「試案」より

それでも「組体操」を続けてきたのは、昭和31年高等学校学習指導要領保健体育科に男子のみが行う「功技」としてピラミッド等が掲載された名残と特別活動の内容である学校行事にその根拠があります。学校行事の目標には「集団への所属感や連帯感」という文言があり、そこに団結、達成感、伝統等が絡み合って、小学校でも難しい技へ挑戦することを是とする「組体操」を続けてきたのです。「あら~、うちの子、あんなにすごい技ができるようになったんだ。」と保護者は感動し、下学年の子供にも「6年生は、かっこいいな。6年生になったら、あれをやりたいな。」と思わせてしまっていたのでした。

特にこれまで「お子さんが上から落っこちて半身不随になったり骨折したりするかもしれませんが、要望が強いので『組体操』を実施します。ご了解ください。」という保護者への通知は、どの学校でもしていないはずです。「うちの子は、骨折しても半身不随になっても構わないですから、ぜひ運動会で『組体操』をやってください。」という保護者がいるとは、考えにくいからです。

既に教科体育としての見地は薄らいでいますが、ケガをすることが分かっていても止められない状況から、ようやっと脱してきています。予見できるリスクの低減に努めるのが当然となっている昨今、昔ながらの「組体操」の伝統が守られても子供たちが死屍累々としていたのでは、全くお話にならないのです。

ヒントは、週2回(月・金)アップロードされます。(令和4年4月1日現在)

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