子供の発する言葉を共有化する意味
体育では、子供のパフォーマンスが目の前からどんどん消えていきます。そのため、動き方のイメージを友達の動きから見取るかVTRの映像で捉えるか、言語で表現して記録するかして共有化を図ります。
映像から「ああ、こんな感じの動きになるんだな。」と即座に習得できる子供もいますが、多くの子供は映像を見ただけでその動きができるかどうかは未知数です。過去に自分が経験したことのある動きと似ていると思えるかどうかがキーになるからです。似たような感じを呼び起こせない子供は、映像を見ても「ああ、あの時のあの感じと一緒かもしれない。」などと考えることは、できないからです。
過去の自分の運動経験の中から似たような動きの感じを呼び起こして、新しい動きに挑戦しようとするには、言語活動が重要になってきます。カーブを走るときには「からだが斜めになっている。」と、言語化できるようにするかどうかです。立ち幅跳びの着地で「音がしない。」のは、「着地でひざを曲げるだけでなく腕を振っているから。」と言葉にすると、安全な着地の動き方が分かったような気になります。
子供の言葉は、毎時間、学習カードに記録するようにします。「うまくできるコツは、何か。」「走るとき、どんな感じがしたか。」などを視点として、振り返れるようにしていきます。これらの言葉は、友達の動きをよく見て真似することで出現しやすくなります。
友達の後転を見て「あっつ! 数字の『6』みたいな形になってる。」という言葉は、大人の発想からは出てきません。ジグザグに連続で跳ぶときに「一回ちょっと休んでから跳ぶ。」という言葉は、大人が使う「膝のタメ」を表現しています。
学習カード上で発せられたこれらの言葉は、次の体育の時間に提示するなどして共有化すると、多くの子供に動きがイメージできます。動きの感じに共感できたときのみ、パフォーマンスに生きてきます。