運動会のようなリレー競技を授業に持ち込むな
運動会の花形という人もいるほど盛り上がるリレー競技。走るのが速い子供が選抜されてチームを組んで行われるため、なんとなく「カッコいい」イメージです。
これを、学級の全員に経験させてあげようという配慮から、短距離走・リレーの授業に運動会のようなリレーを取り入れることがあります。
5・6年生の陸上運動に位置付けられている短距離走・リレーには、「減速の少ないバトンの受渡しをすること」が技能に例示されています。そのため、子供たちはチームごとに、走る順番とともにバトンの受渡しの練習を学びに取り入れます。
運動会のリレーに選抜された子供が「こう、やるんだよ」とチームでの学びをリードすることもあります。受渡しのときに声を掛け合ったり、スタートのタイミングを図ったりするなど、各チームで工夫しながら練習をしています。
そして、この練習の成果を確かめるために「では、最後にみんなでリレーをやって、うまくできるかどうか確かめましょう。」という授業展開になることがあります。このとき、運動会のリレー競技っぽい方法で行ったら、どうなるでしょう。
スタートは、多少の段差を付けるにしても、いざ走り出せばほぼオープンコースです。そうなると、テークオーバーゾーンにも複数の子供が並ぶことになり、「インコースのチームがスタートしたら、内側へ入りなさい。」などと声を掛けるようになります。
練習では出くわすことがなかった局面が現れるのです。そうなると、せっかく練習した減速の少ないバトンパスの成果を出すどころではなくなり、隣に並ぶ友達が気になってしまう状況となります。
みんなで走っている時には「自分たちは、今、何着か」という競争心に火が点けられ、そのことにしか関心が向かない状況にされてしまっています。チームで協働的に学び合ってきた減速の少ないバトンパスの方法は、忘れ去られます。
そのため、走り終わっても「バトンパスがうまくいったのかどうか」というそもそもの学習課題についてまともな振り返りができない結果となります。「タイムがよくなったから、バトンパスもうまくいった」という程度に終わります。ほんとうに「うまくいった」のかどうか、チームで誰も見ていません。
このように授業では、テークオーバーゾーンでほかのチームと競合しないような学習環境を設定しなくては、子供たちが練習の成果を振り返り、次の学びを調整することができません。それでも、運動会のようなリレー競技を経験できるように授業を計画したいですか?