それほどは速く走れないようになっている人の背骨の機能
人間が狩猟によって生活を営んでいた頃、獲物を目の前にしても彼らのスピードに屈して捕り逃がしたとき、「もっとビューンと速く走れたら…」と何度も悔しがっていたことでしょう。
人間は、チーターやカモシカのまねをして前足を着いて速く走ろうにも、彼らのように背骨が屈曲・伸展を繰り返すことで体幹の力を地面に伝えることができないので、まったくスピードが出ません。
もともと人間の背骨は、赤ちゃんが「はいはい」をするときの動き、つまり、背骨を左右に動かしてワニやトカゲのように手足を順々に出して進むようにしかできていないので、腰を左右に振りながら進むしか方法がありません。これでは、手足の屈伸に合わせて背骨をバネのように動かせる彼らに追いつくようなスピードは到底得られません。
二足歩行となったために前足を地面に着いて移動することの必要性がなくなった人間にとって、手足走りやカエル跳びのような運動は、自然に身に付くようになるものではありません。意図的に運動遊びとして経験させなければ獲得できない動きなのです。
これらの動きは、1・2年生の「多様な動きをつくる運動遊び」や「器械・器具を使った運動遊び」の中で扱ったり、各学年の準備運動に取り入れたりすることで、他の様々な運動への発展が期待できます。
なお、人間は立って走ればそれなりのスピードは出ますが、脚の付け根を往復運動させる筋肉しかないため、エリマキトカゲのような付け根を回転させる理想的な走りはできません。