高い跳び箱を越えられた方がいいというだけではない
多くの子供は、「跳び箱は、思いっきり走ってきたほうが跳べる」ものと錯覚しています。跳べた経験がない子供ほど、その意識は高いです。
そこに「踏み切りを強く!」と指導が加われば、助走と踏切のみに意識が向き、最も大切な着手がおろそかになります。指導者が子供を、難しい課題へ引きずり込み、ますます跳べない状況にしているのです。
以前は、昭和52年学習指導要領指導書(当時は「解説」ではありませんでした。)には、学年ごとに高さが例示されていました。そのため、「高い段を跳べる子供ほど、技能が高い」と指導者側にも誤った評価観が残っていることがあります。
今は、高さの例示はありませんが、技によって3・4年生で4段、5・6年生でも5段くらいの高さで、越え方に課題をもって学習します。
3年生以上の基本的な技としては、開脚跳びや台上前転などが例示されています。この基本的な技に十分取り組んだ上で発展技(かかえ込み跳びなど)に取り組むようにします。
そのため、1・2年生で扱ってきた、かえるの足うち、うさぎとび、支持で跳び乗り・跳び下り、馬跳びなど、跳び箱を跳ばない運動遊びをどの学年でも準備運動に取り入れていきます。
越え方については、5・6年生の内容である発展技につながるよう、安全な着地の仕方を考えさせたり調節器を入れた場で行わせたりするなどして、自己の能力に適した課題をもちやすくします。
高い段に挑戦するだけの学習は、過去のものになりました。「跳べるんだから、高い段にして!」という子供の要求には、いかに個別最適な学びと言えども、断じて「NO!」です。