子供が主語となる「身に付けるようにする」
平成29年版の学習指導要領から、3つの資質・能力を身に付けるようにすることが目標となりました。
身に付けた能力は、そのあと様々な場面で活用されなければ意味がありません。身に付けているだけで活用されなかったら「何のために身に付けたんだろう?」ということになってしまうからです。
29年版となる前にも「身に付ける」という表現は、各学年の目標にありました。例えば、5・6年生では「…その運動の特性に応じた基本的な技能を身に付け…」となっていました。その内容としては、器械運動であれば「…その技ができるようにする」であり、陸上運動や水泳では「その技能を身に付けることができるようにする」でした。同じように1・2年生でも「…その動きができるようにする」と示されていました。どの運動でも語尾は必ず「できるようにする」だったのです。そのため解釈とすれば、「とにかく、動きや技ができるようになれば、それでいいんじゃない?」とも取れました。「技能」に偏っていたと言えますね。
3・4年生の浮く・泳ぐ運動で「検定」と称して技能を評価しようとしていたこともありました。このとき、やっと10m泳げたことをもって「合格!」としていたのです。偶然であってもたった1回「10mを泳ぐことができた」のは事実なので、これをもって「合格!」として「できるようにする」内容を評価していたわけです。
「検定」は、水泳シーズンの最後に行われる場合も少なくなく、合格したこの子が、次の年にもう一度10mにトライしたとき「できる」という保証はありません。 そもそも「検定」は、評価規準を数値化したものでしたが、浮く・泳ぐ運動には、泳げる距離の目安さえも示されていません。
「身に付ける」ことができた技能は、「合格!」のあとも活用していけることが大事なので、その技能が定着していることまでを含んでいます。その技能とは、例えば「呼吸をしながら進む」ことです。たった1回10m泳げたくらいでは、「身に付ける」をクリアしたことにはならないのです。