マラソン大会は、何のためにやっているのか
冬になると、いろいろな学校でよく行われてきたマラソン大会。こうした体育的活動が「子供のために」実施されているという見方は当然ですが、そう思ってやっていることが全て「子どものために」なっているとは限りません。
子供からみた運動の特性はどうなのかという視点から冷静に体育的活動の内容を判断していくことが大切になります。そもそも、「マラソン」は学習内容ではなく、小学校の場合「体つくり運動」で持久走が例示に示されているだけです。「マラソン」は子供たちに意欲を持たせようとするエサに過ぎません。
これまでマラソン大会は何のために行われてきたのでしょうか。体力づくり、健康づくりはもちろんのこと、頑張り抜く心を育てるなどが一般的でしょう。しかし、そのようなねらいでマラソン大会を行いさえすれば、良い結果に結びつくと単純に考えるわけにはいかないのが、今日の子供の事情です。
「健康のためには、運動することがよい」と言われますが、運動の効果が得られるようにするには、「適度な運動」なのかどうかが大切です。そのほかにも十分な栄養と睡眠・休養も必要となりますし、マラソンにストレスを感じてしまうと体の機能が十分には働かないため、精神的な安定も必要な条件です。
運動をすれば、それだけで健康になるというのは、十分な言い方ではないです。 「適度な運動」は、一人一人で違っており、その質と量を処方してこそ運動の効果があります。一律に「さあ、マラソン大会に向けてがんばれ!」と走らせても体力や健康のねらいについては、ほとんど効果を期待できません。
運動する子供とそうでない子供の二極化がある今日、特別に支援が必要な子供に対する明確なねらいがある体育的活動を除けば、マラソン大会は完全に過去の遺物になりました。
なお、中学校学習指導要領では陸上競技に長距離走が位置付いているので、陸上運動系の特性を味わって長い距離を走る運動は、中学校になってから初めて学ぶ内容となります。