運動の特性から授業づくりが始まる
「運動の特性」の分析が、授業づくりに必要な理由を、バスケットボールを例に見ていきましょう。
運動の形式や技術の仕組みから見ると、コート内で2チームが入り乱れながらドリブルやパスなどを使って防御を破ってシュートし、一定時間内に得点を競い合うゴール型のゲームであるといえます。このような運動の特性を「構造的特性」といいますが、この捉えでは、一瞬にして攻守が入れ替わる展開のため体の切り返しなどの技能も身に付けなければならないことになります。この見方では、技能重視の授業展開とならざるをえません。昭和40年代の授業です。
運動が心身の発達に与える効果から見ると、相手と味方が入り乱れて身体接触をともないながらゲームを展開するので、プレーヤーの動きに応じた素早い身のこなしが獲得できます。また、ゲームに参加してチームに貢献している実感がわき、力が結集され勝利を手にすることができたときの喜びが魅力でもあります。これを「効果的特性」といいますが、しかし、この見方でも、最終的には「できる」状況を強く求められるので、子供にとってやらされている授業展開となりがちです。 主体的な学びは生まれません。
運動を行うプレーヤー、つまり子供自身の「やってみたい」という欲求から見ると、攻防の切り替えの速いゲームで子供たちも比較的好む教材であると言えます。相手チームに勝つために、協力して集団的な技能や戦術を競い合うことや作戦を立てて勝敗を競う過程に楽しさや喜びを味わえる運動です。攻防の速さ、シュートに結び付けるまでの様々な作戦や協力、声かけなどを通して、ゲームそのものを楽しむことができる運動とも言えます。
これの分析は「機能的特性」ですが、これを大人が感じる運動の楽しさや喜びを含めた「一般的特性」でなく子供から見た特性で捉え直した時、この見方で授業を作ろうとするならば、主体的な学びを生み出すことができます。
体育の学習指導案で示される「運動の特性」とは、「子供から見た機能的特性」であり、そこから授業づくりがスタートします。