「踏み越し跳び」は、ほんとうに跳び箱の動きなのか
跳び箱を使った運動遊びに例示されている「踏み越し跳び」。この動きは、片足で踏み切って跳び箱に跳び乗ったりジャンプして跳び下りたりするのですが、どう見ても跳び箱運動の技能に発展していきそうに思えません。片足での踏切に加えて、何と言っても「支持」する局面がないからです。
「踏み越し跳び」は、昭和53年版学習指導要領までの例示に「またぎ越し」と並んで「踏み越し」として示されていた動きですが、これらの動きには、いずれも「支持で」の局面がありません。「またぎ越し」に至っては、跳び箱に触れることなくハードルのように跳び越える動きでした。そのため、「これじゃ、跳び箱の学習にならない。」「陸上運動系の動きだから、器械運動系から外すべき。」との考えにより、平成元年版から「踏み越し」は消滅し、例示も「支持で」という動きばかりになりました。
しかし、平成20年版から「踏み越し跳び」は復活します。この当時、学校での安全管理が重要視されており、どちらかと言えばけがが多い運動である跳び箱は、両足での「着地」をどのように安全に行えるように指導するかもカギとなっていました。一方、運動経験が少なくなって開脚跳びなど「支持で」跳び越すことができない子供の存在も見られたため、とりあえず、跳び箱を踏んづけてジャンプすればいいという、誰にもできそうな「踏み越し跳び」の中に活路を見い出そうとしたのです。
動きに関しては系統性を踏まえていないように見える「踏み越し跳び」の意義を踏まえ、のちの技能に発展することが期待できる「支持で」の例示とのバランスをよく考えて取り上げることが、1・2年生の「跳び箱を使った運動遊び」では大切になります。さもないと、「跳び箱を使った運動遊び」のつもりが、いつの間にか「跳の運動遊び」になってしまいますから…。